日本を歩いていると、いろいろな神さま仏さまに出会う。神さま仏さまだけでなく狛犬のような神さまの使いもいて、にぎやかである。
ふらっと神社仏閣を訪ねただけで、本殿や本堂にあがらなくても、門前で仁王や狛犬に出会ってしまうし、ただの道端でお地蔵さんや道祖神に出会うこともある。
この国ではそこらじゅうにむきだしの神さま仏さまがいるのが当たり前になっていて、さして信仰心のない私のような人間でも、なんとなくその前を素通りするのがはばかられ、立ち止まって手を合わせたりする。どこまで本気なのか自分でもわからないが、手を合わせてなんとなく納得するのである。
そういうものだと思っているから、路傍に神さま仏さまがいても、これまでは当たり前すぎてさして気に留めてなかったのだけれど、あるときふと、なかに気になる神仏が混じっていることに気がついた。
べつに得体の知れない神仏という意味ではない。石仏であれ、道祖神であれ、仁王であれ、狛犬であれ、それが何者かということは私にもだいたいわかる。けれど、その姿がよく知ったそれと違っていて、一度見たら妙に心に残る、そういうタイプの神さま仏さまがいたのである。
それらは素性は仁王や道祖神だったりするが、それにしてはその定型を逸脱しており、見た目がユルかったり、素朴だったり、ときに雑だったり拙かったりもするのだが、そんな自由な姿がかえって私を魅了した。
こんな脱力感あふれる姿の神仏もありなのか。
これまで端正なお地蔵さんや、にこやかな石仏、いかにもホッコリする道祖神などに手を合わせていながらも、実際は何も心に響いていなかった。ただ機械的に手を合わせていただけだ。だが、こうしたユルい神さまがいるなら話は別だ。
以来、どこか古臭いものという思いが抜けなかった路傍の神仏に、親近感を覚えるようになった。
この本はそうして私が旅で見つけた気になる神さま仏さまほか、狛犬などの造形をまとめた記録である。
これらを宗教美術と呼んでいいのかどうかわからないが、そのユーモラスな味わいは一見の価値があると私は信じている。
次回からは、『ニッポン脱力神さま図鑑』のゆるカワな神さまが毎日交代でお出ましくださいます。お楽しみに。
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