生産性の重心をとらえる3つの「時間軸」
いよいよ、本章からは具体的な時間戦略について考えていきます。
あらゆる仕事の時間軸の中で重心を見つけていくということは、「生産性」を劇的に上げることになります。
まずはハードワーク期における時間戦略です。扱う時間のスケールは次の通りです。
1日/1週間/3~10年
本章ではこれら3つの時間軸に対して重心がどこにあるのか、私の考えを述べていきますが、先に結論だけ述べておきましょう。
Q.1日の重心は?
〉〉〉A.仕事の始め方、終え方
Q.1週間の重心は?
〉〉〉A.金曜日の夜8時以降
Q.3~10年の重心は?
〉〉〉A.3段階プランニングの2回目の目標設定
繰り返しになりますが、重心とは言い換えると、自由と規律のバランスをとるということです。なので、私が考える時間戦略とは、別に「予定をガッチガチに固める」というわけではないです。基本的には自由に時間を使っていいのですが、少しの「規律」を取り入れることでフルライフを目指していこうという考え方です。
それでは、さっそくいきましょう。まずは、1日を過ごす上での重心です。
1日の重心は、仕事の始まりと終わりにある
まず、問いから始めたいと思います。
Q.よい1日とは何か?
これについては、人それぞれ意見があると思います。ただ、重要な事実があります。それは次の通りです。
「日中に起こることの多くは、自分ではコントロール不能」
私は現実主義者なので、自分でコントロールできないことについては、スッパリ諦めるたちです。それよりも、自分がコントロールできることに集中したほうがいい。
すると「よい1日とは何か?」という問いは、次のように変換できます。
Q.コントロール可能な時間の中で、1日の評価に大きな影響を与えるのはいつか?
私の場合、それは「仕事の始まりと終わり」でした。仕事の始まりと終わりはコントロール可能だし、それを素晴らしいものにできれば、たとえ日中にどんなアップダウンがあったとしても、それはよい1日だったと思えるのではないか、と。
はい、ということで私の結論は以下の通りです。
〉〉〉A.「1日の重心は、仕事の始まりと終わりにある」
とはいえ、これだけだと単なる思い込みにしか過ぎないので、実際に検証を行ってみました。2019年、ビジネスパーソン5000人を対象とした調査を行いました(電通バイタリティデザインプロジェクトとの共同研究)。具体的なリサーチ・クエッションは、次の通りです。
Q.バイタリティが高い人たちは、どのように仕事を始め/終えているのか?
注:よい1日を過ごしている人たちという意味合い
まず、「仕事の始め方」からいきましょう。旧来の考え方だと、出社するや一目散にパソコンに向かう人が「元気よく仕事に取り組んでいるなぁ」と思われていたかもしれません。しかし、調査結果は意外なものでした。
バイタリティが高い人が、会社に来てまず何を行うのか。すぐに仕事を始めるのではなく、「同僚と挨拶を交わす」あるいは「ToDoリストの確認」だったのです。その反対に、会社に来てすぐ仕事に取り掛かる人は、バイタリティが低い傾向にありました。
では、「仕事の終え方」についてはどんな結果が出たでしょうか。
まず最高に面白かった発見は、「時間になったから帰る」人は、バイタリティが低い傾向にありました。一方で、その日のタスクを振り返りながら翌日以降の仕事の計画を立てたり、身の回りを片づけ・整理整頓してから帰ったりする人は、バイタリティが高かったんです。
仕事の始め方と終え方の図を見比べるとクリアになるのですが、機械的に仕事に「流されている」ような人はバイタリティが低いです。反対に、自分の仕事を俯瞰したうえで、主体的に取り組んでいる人はバイタリティが高いという結果が出ています。
以上の議論をまとめると……うかつに仕事を始めない、そして、うかつに仕事を終えない。この2つの重心を意識することが、1日を過ごす上での時間戦略になりそうです。
「To Do」ではなく「To Feel」の振り返りを
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