SFマガジン /小野美由紀
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最終回】そして、二人のバースデー
2020年4月に刊行されたばかりの小野美由紀さんの作品集『ピュア』から、収録作のひとつ「バースデー」を毎日更新で全文公開します。
もしもずっと一緒に過ごしていた幼なじみの大親友が、夏休みの間に「変身」してしまったら? ある女子高に起こった「性」をめぐる事件を描いた、少し不思議な青春小説です。
(連載第7回・最終回)
12月16日
冬って星が大きく見えない?つったらえ、私には逆に遠く見えるけど、つったのがちえで、でもなんか光はよく届く気がするんだけど、って言ったらあ、それは私も同じ、って言ったのもちえだった。
私は今、満点の星空を見ながら一人、寒空の下に立っている。
「ひかり」少し低い、けど聞き慣れた声が後ろから聞こえて、振り返るとちえが立っていた。着古したダッフルに大きめのズボン。靴は新しいバッシュ。髪は後ろだけ、すっきり刈り上げられてる。
「待った?」 「うん、かなり待った」私は少しだけ意地悪した。ちえは眉毛をはの字にして肩をすくめると、「ごめんね、これでも急いで来たんだ」と言った。
むき出しの手は赤くなっていて、筋が目立って、いかにも冷たそうだ。
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この連載について
SFマガジン /小野美由紀
SFマガジン6月号に掲載された小野美由紀氏の「ピュア」を特別公開します。タイトルの通り、ある純粋な性と生を描く遠い未来の物語です。
著者プロフィール
SFマガジンは2014年に創刊55周年を迎えた、わが国唯一の総合SF専門誌です。紙版は偶数月の25日発売で、特集を中心に内外のSF小説を数多く掲載しています。
こちらのcakes版では、SFに関するコラムやレビュウを中心に週刊で記事を配信していきます。