夏休み明けて学校に行ったら突然クラスメイトの性別が変わってた、ってニュースは最近ネットとかでもよく見るし、私も別にふーん、って感じだったんだけど、自分の親友がそうなったんなら話が別だ。なんせ知恵と私は幼稚園の、タテセン一本引いたみたいなスジマンの頃から裸できゃっきゃ、戯れてた、ガチの大親友、正真正銘のBFFでBAEで、竹馬の友でズッ友で、とにかく、互いのことはなんでも知ってる(と、思ってた)世界で一番大事な幼馴染なんだから。
9月2日
「全身の染色体を書き換えるんだよ」
男になった知恵は私の真横を歩きながら、相変わらずのポーカーフェイスで他人事みたいに説明する。 「繭みたいな小型のドームの中に入って、1ヶ月過ごすの。その間に特殊な溶液が全身の細胞に浸透してXX染色体をXYに書き換えてくれるんだよ。記憶も人格も元のまま。肉体の性別だけが、魔法みたいに書き換わるの」
「つまり、元から男だったみたいに?」
「元から男だったみたいに。」
「手術の間の記憶はあんの?」
「ううん。ない。麻酔薬飲んで、そのまま昏睡状態になんの。なんかあったかくて、お母さんのお腹の中にいるみたいな不思議な状態が続いて、ちえさん、って呼ばれて目、覚ましたら、私はベッドの上にいて、男になってるのを発見したわけ」