阿川佐和子の声掛け
私のほうも見てる! ってそんなわけないか。
距離の近い文章、ってありますよね。
なぜか文章越しにニコニコ笑う顔が見えるような。
なんとなく視線がぱちっと合ったような、なんか親近感覚える、いい感じだな〜もっと読みたいな〜って、読み手の私までニヤニヤしてしまう。
でも不思議。文章の親近感って、一体なんなんでしょう?
テーマの身近さ。選ぶ言葉のわかりやすさ。うん、それもある。
でも私は、それ以上に効果的な振る舞いがあると知りました。
阿川佐和子さんという「親近感の権化」とも言える大人気エッセイストは、なんと文章を書きながら、ときどき、唐突に、読み手の方を向いて声を発するんです。
(いやいや、文章なんていうものは、いつでも読み手の方を向いてるじゃないか)と突っ込まれそうですが、違うんです。少しニュアンスが。
文章の中で阿川佐和子さんは「ウリウリ」について語っています。
どちらかというと書き手がひとりで喋っているような文章ですね。
読み手は書き手のひとりごとを聞いている。だけど次の箇所で、いきなり空気が変わります。
書き手はぐるんと首をまわして、読み手のほうに向き直るのです。
〈「目がまくまくする」と言って驚かれたこともある。使いませんか? 目ってときどきまくまくするでしょう。〉