信頼の厚い監督はグラウンドに立つだけで場の空気が引き締まる
教育者には、人望も欠かすことのできない要素だろう。
「この人についていけば確実に進化できる」
「この人のアドバイスは間違いない」
人望とは、周囲の者にそう思わせる人間力に他ならない。人望を身につけるためには、深い知識を身につけるだけでなく、度量や風格、決断力なども備えておく必要がある。さらに、人として尊敬できる人物であるかどうかも問われる。
「『信』は万物の基を成す」という言葉があるように、すべての基本は信頼関係である。教育者は、教え子との間に、いかにして信頼関係を築くかに心を砕かねばならない。信頼関係があれば、すべてはうまくいくようになる。人望があれば、おのずと信頼関係も生まれてくるだろう。
日本プロ野球史の中で「大監督」と呼ばれた人のほとんどが、選手から信頼されていた。しかも、藤本定義さん、鶴岡一人さん、三原脩さん、水原茂さん、川上哲治さん、西本幸雄さんといった「名将」は、そろって風格を兼ね備えていた。
「この人なら大丈夫だ」
「この人のためにやらなければならない」
そう思わせるようなムードがあった。私が身近で接していた鶴岡さんなどは、威厳そのものといった人で、ただグラウンドに立つだけで場の空気が引き締まった。私などは、こきおろされることも多かったが、選手たちの人望が厚かったのもまた事実である。
アマチュアの指導者は恐れを知らない
2001年、私が社会人野球チーム・シダックスから監督のオファーをいただいたとき、志田勤会長(当時)の言われた言葉が忘れられない。
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