ごきげんいかがでしょう。今回は、東京の湾岸地区へ出かけてみては、とのお誘いを差し上げます。東京ではこのところ湾岸方面に、アートを観る場所が増えてきているんですよ。
美術の展示には広い空間が必要ですし、できれば天井も高いほうが、大きな作品を飾れて都合がいい。条件に合った建物を探すとなると、ビルや住宅がひしめく都心ではなかなか難しい。そこで、比較的土地に余裕のある海沿いに設けられることが多いのですね。
山手線の浜松町駅から、東京湾方面へ向けて歩くこと10分ほど。クルーズ船が発着する竹芝埠頭近く、倉庫のような外観の建物のなかに「gallery916」はあります。
600㎡という大空間は、主に写真作品を展示することに使われます。現在開催中なのは、「Kozo Miyoshi 1972~」。三好耕三は精緻なモノクロプリントで知られる写真家です。会場にずらりと並ぶ風景写真は、グレーの濃淡だけであらゆる事物を立ち表しています。まるで細部まで克明に描写された、超絶技巧の墨絵みたいですよ。
広大なメインギャラリーもいいのですが、今回は、脇にあるサブギャラリー「916small」で開催されている別の展示に大いに注目してみましょう。Smallという名のとおり、こちらはかなり控えめなサイズの空間。ですが、一歩足を踏み入れると、そこにはなにやら異様な空気が立ち込めていますよ。