ナポリタンのモチモチ感を出すために実験してみた結果

おいしいナポリタンに欠かせないパスタのモチモチ感。これを作るためには、前日に茹でて一晩寝かせればいいそうなのですが、ちょっと面倒です。今回、茹で置きせずにモチモチ感を出すために樋口さんがある実験をしてみました。

昨年、刊行した拙著『新しい料理の教科書』(マガジンハウス)でもっとも賛否両論のあった料理がこのナポリタンです。レシピの詳細についてはnote『喫茶店のナポリタンの作り方、プロの味に近づけるための工夫をいくつか』でも紹介していますが、「喫茶店の味になった」という肯定的な感想の他に「前日からスパゲッティを茹でおきするのは面倒」という意見がありました。確かに「今日、ナポリタンを食べよう」と思った当日に食べられないのは弱点ではあります。

今回はそれを克服すべく新しい技法を取り入れました。それは「パスタを事前に水に浸けておく」というもの。これで少なくとも前日から準備する、という必要はなくなります。

ナポリタン

材料(1人前)

ディチェコ フェデリーニ(1.4mm)またはスパゲッティーニ(1.6mm)…100g
玉ねぎ…1/4個
ピーマン…1個
マッシュルーム…2〜3個
ウインナーソーセージ…3本
オリーブオイル…大さじ1/2
トマトケチャップ…50g
醤油…小さじ1
バター…5g


1.フェデリーニ(1.4mm)を水を張った大きめのバットなどに入れ、1時間浸ける。スパゲッティーニ(1.6mm)を使う場合は1時間半漬ける。(ジッパー付きの保存袋を使ってもよい。事前に準備しておく場合は水から引き上げて冷蔵庫で保存)

2.玉ねぎは薄切りに、ピーマンはヘタと種をとりのぞき、5mm厚に切る。マッシュルームは半分に切ってから5mm厚にスライス、ウインナーソーセージは斜め薄切りにする。

3.フライパンにオリーブオイルをしき、2の材料をすべて入れ中火にかけて炒める。玉ねぎがしんなりしてきたら具を鍋の端に寄せ、トマトケチャップ、醤油、バターを入れる。ひと煮立ちしたら全体を絡め、パスタが茹で上がっていなければ火を止めて置いておく。

4.水1Lを沸かしたところに塩10g(分量外)を入れ、1の水漬けパスタを3分間茹でる。茹で上がったらトングか箸で鍋に移し、強火で全体を絡めながら炒める。ケチャップが全体に絡まったら出来上がり。


水に浸ける手法でモチモチ感を出す

スパゲッティを噛んだ時、かすかに芯が残った状態をアルデンテと言います。この言葉を広めた作家の伊丹十三は、日本で食べるスパゲッティは「例外なく茹で過ぎである」とし「スパゲッティは饂飩(うどん)ではない」と訴えました。

一方、日本生まれの料理であるナポリタンはこの茹ですぎの状態にこそ、おいしさがあります。ナポリタンにアルデンテは禁物。ベストの方法は「茹で置き」の麺を使うことです。茹で置きは火口の少ない喫茶店などで、手早く提供するために生まれた工夫なのでしょうが、一度、茹でた麺を冷蔵庫で寝かせることで、そのあいだにデンプンが水分を吸収し、もっちりとした特有の食感になるのです。

noteで紹介したのがこの方法ですが、前日から用意しないといけないのが難点なので、今日は茹で置きせずにもっちり感を出す方法を考えます。

デンプンが水を吸収することでもっちり感が出るのですから、あらかじめ水を吸収させておけばいいのでは、ということで水漬け法を試してみました。この水漬け法は調理時間やエネルギー、水などを節約するための方法として、広く知られています。

理屈は簡単なのですが、試してみるとなかなか厄介でした。浸水時間によって仕上がりが大きく異なるのです。NHKのテレビ番組では浸水時間が増えても麺が余分な水分を吸ってふやけることはない、という話でしたが、実際は長く浸けると加熱したときの食感が弱くなるようです。麺が余分な水分を吸い込むことはないのですが、時間が長くなると麺のデンプンが流出してしまうからでしょう。

何回かテストをした結果、「パスタを水に漬けすぎず」「1%塩分濃度の湯で3分茹でる」とナポリタンに向いた麺が茹で上がるという結論を出しました。ただ、パスタの製造メーカーによって吸水時間には差があるので、今回のレシピは入手しやすいディチェコに限定しています。料理は調理や食材などの変数が多いので、完璧なレシピは存在しません。ただ、デンプンの性質などの原理原則は変わらないので、その部分を理解しておくと失敗のリスクは格段に減ります。

ナポリタンはトマトケチャップという完成された調味料で味付けするので失敗が少ない料理ですが、ひとつだけポイントを挙げるとすればパスタを和える前にトマトケチャップを煮詰めること。水分が飛ぶことで味が濃厚になります。手軽に挑戦してみてください。

この連載について

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おいしい」をつくる料理の新常識

樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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コメント

merry666 喫茶店のモチモチナポリタンにはこんな秘密が・・・ 17日前 replyretweetfavorite

naoya_foodlab noteのレシピとは違ってこちらは隠し味に醤油を入れたバージョン。この配合がいいかも。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite