使えない高学歴は無意味。ハイスペックすぎる専業主婦の深い悩み。

第4試合<学歴> A子の場合  有名大学の学生時代はキャバ嬢として稼ぎ、その経歴を抹殺して、一流商社に入社。英語も中国語も堪能で美人、ハイスペックすぎる彼女は、これまた上等の相手と結婚し、妊娠を機にNY生活へ。誰もがうらやむ状況の彼女だが、その屈託は実は深い……。話題のエッセイ、鈴木涼美『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』から特別連載!

能力と学歴が高い女子は、キャバ嬢としても優秀

 高学歴・高収入・高身長というモテ3Kを目指す男諸君にとっての学歴と、カワイイ・巨乳・若いでモテの8割が決まる女にとっての学歴は、当然のごとく意味合いが違う。男だって別に今時、東大卒ごときだけでモテるわけでもないだろうし、高校3年間で女扱いに磨きをかけずに勉強机に向かっていると、色恋分野で大分後れもとるだろうが、それでも同じ顔同じ性格であれば日大よりも慶應の方がモテるし、少なくともたゆまぬ努力で積み重ねた学歴が男としてのスペックにマイナス要素としてケチをつけることはない。

 対して女の方は、CanCam を教科書に持ち替えて、ランコムのマスカラをシャープペンシルに持ち替えて、東大や慶應のネームがついたクレジットカードを手に入れたとして、別に学歴が高い方がモテるわけでもないし、場合によっては(というか男の好みによっては)東大女よりも聖心女子大の女の方がいい、と一蹴される。そしてカワイイ・巨乳・若いが何よりの価値だとすれば、うっかり手放した CanCam やランコムの代償はあまりに大きい。

 賢い女は当然、CanCam を手放さずに、睡眠時間かカラオケ女子会の時間でも削って両立を目指す。女子力を維持して学歴だけつけるぶんには、少なくともひたすら自分よりバカな女を選びたがる趣味の悪い男を除けば、モテを手放すことにはならないからだ。

「性格悪いと思われるだろうけど、正直、キャバクラでバイトしてても、他の女の子見るとお前らとは違うんだよって思っちゃうんだよね」
 桜木町のバーミヤンで汁そばのようなものを食べながら、こっそりそう言っていた彼女は、横浜西口にある地元では有名なキャバクラで毎月売り上げが上位三人に入るほどしっかり仕事をする嬢だったのだが、彼女が「お前らと違う」と感じるのは、キャバクラでの売り上げとは関係のない事柄についてだった。

 当時の彼女は有名私立大の優秀な学生で、中国語と英語を流暢に話すことができ、夏休みには上海への留学も決まっていた。クラスメイトの多くが国立大学を受験する超優秀な高校を卒業した彼女が迷わず私大受験を決めたのは、「学者になりたいわけじゃなくて、企業に勤めるつもりだし、それなら時間とか予備校の費用とかが無駄にかさむ東大じゃなくてもいい」という理由だったらしい。  
 三人兄弟の3番目で、全員を私立大に通わせる親を気遣い、また彼女自身の豪華趣味を満足させるため、大学入学と同時に実家から通いやすい横浜のキ ャバクラに入店した

 今でこそ、銀座や六本木のキャバクラに慶應卒のキャストがいたり、現役の有名女子大生 が働いていたりすることに何の珍しさもないが、それは長く続く不況と、小悪魔 ageha のヒットなどによるキャバクライメージ浄化が重なり3年単位で増加してきた結果であって、15年前の横浜では現役大学生、四年制大学卒というだけでそれなりのブランドになるほどその数はたかが知れていて、彼女のような一流大学の熱心な学生はさらに少なかった。そして彼女もまた、自分がその場所でいかに特別であるかを重々承知していて、それを臆面もなく態度に出していた。

「私はマメだし仕事はできるから、店でも一番時給出してもらえるグループにいるけど、同じ時給の他の子とか、ナンバーワンだとか時給1万以上だとかいうことに重きを置きすぎって思わない? ナンバーワンって言ったって、しょせんただのキャバクラ嬢じゃん。月に100万 200 万稼いだって、じゃあ10年後何してるの? そのまま結婚でもして男の金で生きてくの?  つまんない人生

 高学歴系の夜の女にもいろいろいて、学歴や経歴を一切重視しないタイプ、高学歴であることを隠したがるタイプ、高学歴を鼻にかけるタイプなど重きを置くポイントは様々だが、とにも角にも彼女は自分にとっての学歴はキャバクラの同僚たちと自分を隔てる重要なファクトだと認識しているタイプであった。

 マメであることに加えて、細身で大学のミスコンにノミネートされるほど美人であったことが、彼女のその自意識をさらに肥大させることに一役買っていた。彼女はキャバクラを「ちょろい」と感じていたし、嬢たちが一喜一憂する売り上げナンバーや指名本数、イベントの罰金などは「取るに足らないこと」と感じているらしかった。

 ビッグマウス気味というか何様的な大口を叩く子は、結局は、見下しバカにした対象の中に絡め取られていく、というのが多くの人が望む結末ではあるのだが、賢い彼女はそうはならなかった
 キャバクラで働きながらもトップクラスの成績を維持し、留学で語学力にさらなる磨きをかけた後は、まっとうな方法で就活に挑み、第一希望の総合商社に悠々と入社した。抜かりのない彼女は、就活や結婚で不利になるような経歴が簡単に表に出ないように、キャバクラでは一切の撮影のオファーを断り、また3年生の冬には携帯電話番号を変えて客やキャストとの連絡を絶っていた。

一流商社ウーマンから結婚、出産、NY生活

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picarinn 😎σ(-ω-*)フム(笑) 8ヶ月前 replyretweetfavorite

delilah_nya ぐぬぬぬ… 8ヶ月前 replyretweetfavorite

yazi_bopomofo なんか好きになれない文章だけど、この女性の気持ち… https://t.co/hxgekoAeie 9ヶ月前 replyretweetfavorite

Fx_Hermine 彼女を不幸にしてるのは学歴じゃなく、何者かになれるはずだったという自意識… 9ヶ月前 replyretweetfavorite