現在の資本主義社会は、走り続けることをやめたら途端に倒れてしまう

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会における生き方までを語り尽くした、『都市と地方をかきまぜる』(光文社新書)を、cakes読者に特別公開します!

第二章 人口減を嘆く前に「関係人口」を増やせ

一 都市住民たちはなぜ被災地に向かったのか

◆被災者に救われていた支援者

東日本大震災の発生直後から、私は被災地支援活動をするために、岩手県の沿岸部にはりついていた。発災後間もなくして、東京をはじめとする大都会からボランティアが大挙してやってきた。最初は支援物資の運搬から始まり、炊き出し、ガレキの撤去、子どものケア、お年寄りの傾聴活動、避難所や仮設住宅の世話など、都会からやってきた学生やサラリーマン、OLたちは献身的に支援活動をしていた。

私は県議としての立場も活かしながら、外から入ってくる人、物、金を現場で必要としているところにつなぐ役割を自主的に担っていたので、多くのボランティアたちと出会うことになった。会社員、学生、経営者、団体職員等々。ものすごい勢いで人、物、金が被災地に流れ込み続けていた。

震災から半年ほど過ぎたあるとき、ふと思った。なぜこのような都市から地方への流れが、震災前からなかったのだろうかと。

いうまでもなく東北地方はどこに行っても過疎、高齢化、行財政資源の枯渇、経済縮小という問題を抱えている。震災前、大都市で暮らす人々はこうした地方の農漁村が抱える問題に、まともに目を向けることはあっただろうか。二〇一一年、「絆」という言葉が日本列島を覆ったが、そもそも都市と地方の絆などなかったからこそ、あそこまで「絆」が叫ばれたのではなかっただろうか。

被災地を訪れた都市住民たちは、震災前から過疎、高齢化で一次産業の担い手が減り続け、疲弊する農漁村の実態を知った。津波が来ようが来まいが、行き詰まっていたのだ。そのことに同情し、心を痛め、なんとかしてあげなければならないという使命感に駆られている人たちがたくさんいた。

しかし、と思う。そうした疲弊する農漁村の姿を生み出したのは誰なのだろうかと。これは、果たして農漁村で暮らす人たちだけの問題なのだろうか。都市部で暮らす私たちは日頃、スーパーや居酒屋で魚介類にお金を払うとき、値段を基準にすることが多い。とにかく安ければ安いほどいいと。

魚価は低迷し、漁師では食べていけないと海を離れる漁村の若者たち。この事実を私たちは日常の暮らしに引き寄せて考えるべきなのではないだろうか。つまり、こうした問題を生み出す側に間接的に加担していた、共犯者としての自分を自覚しなければならないのではないだろうか。問われていたのは、日常の私たちの消費のあり方だったのだ。

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都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡

高橋博之

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会におけ...もっと読む

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sanukimichiru |都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡|高橋博之|cakes(ケイクス) https://t.co/uOKAWeq8D3 岩手に住みたい と書くのは簡単 お仕事 つくれるか 4ヶ月前 replyretweetfavorite

DADA21C だけど、自転車操業は資本主義に限った話ではないよね。 高橋博之 https://t.co/to2RNMFUdY 4ヶ月前 replyretweetfavorite