​浜口京子が映った瞬間の緊張感

おかげさまで300回目を迎えた武田砂鉄さんの「ワダアキ考」。記念すべきこの回で取り上げるのは、浜口京子です。女子レスリングの五輪メダリストであり、最近はタレントとしてテレビでめざましい活躍をしている彼女。以前取り上げた「深田恭子と浜口京子」の回は、300ある本連載の中でも名作と名高いです。今回は満を持して単独の浜口京子論。300回なのに浜口京子評。いったいどのような話になるのでしょうか。


連載300回になりましたので

この連載も、今回で300回になった。もう6年ほど週イチの連載を続けてきたことになるが、感覚として、「今回は、当然、この芸能人を取り上げるっしょ!」というセンセーショナルなタイミングは年々減っている。たとえ派手な事柄が生じようとも、とにかく、事務所発表の文書や当人のSNSによって、「公式見解はこれです」「これ以上こちらから発表することはございません」という体制が取り急ぎ組まれ、忠実なファンは、実際のところ、極めて不安定な発表であっても、それを精一杯、好意的に咀嚼しようとする。外から意見を投げると、それは憶測に過ぎないという審判が矢継ぎ早に下されてしまう。

本人の周りにファンがいるのはいつの時代も変わらないが、本人の周りに、本人が言うことを絶対的に信じる人たちがいる、という構図に、遠巻きがどこまで慣れちゃっていいのだろうか、とは思う。たとえばあるグループが解散して、そのグループにまつわるポジティブな秘話を投じると、「この人は理解してくれている」と褒め称えられる光景が広がる。井上公造がイニシャルトークで、もうすぐ結婚しそうな人を発表する光景はまだまだ見かけるが、本人や事務所、その周りのファンに気を遣いながら披露されるイニシャルトークは、年々迫力を失っている。少し前の流行り言葉を用いるのは気が乗らないが、忖度ってヤツを意識的に機能させている。そういう働きとはできる限り距離をとりたいものです。というわけで、変わらず、よろしくお願いします。以下、通常運転。

浜口京子の瞬間にハマる

テレビをザッピングしていて、この瞬間に立ち会えると何だか得をした、と思えることがある。『新婚さんいらっしゃい!』で桂文枝がズッコケて、一緒に転がってしまったイスを山瀬まみが手際よく元に戻す瞬間。『情熱大陸』の最後のナレーションが、「〇〇の歩みはまだ始まったばかりだ」などと、これまで何度も聞いたことのある一言だった瞬間。『サンデーモーニング』に出演している姜尚中の声が小さすぎて、周囲が精一杯静かになって聞き取ろうとする瞬間。『モヤモヤさまぁ~ず2』で、あくまでも偶然をよそおって入店した和菓子屋さんの迎える準備が万全だった瞬間。番組を作っている側にはいつものことであっても、こっちが勝手に特別視することで、地味な興奮を作り上げることができる。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

t_take_uchi 浜口京子が映った瞬間の緊張感|武田砂鉄 @takedasatetsu | 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

die_kuma @takedasatetsu あと300回目のテーマが浜口京子なのは、担当が無類のハマキョン好きだから、ではなく、たまたま偶然、300回目も平常運行だからのようです。引き続きよろしくお願いいたします。 https://t.co/i2kgV0eGex 約1ヶ月前 replyretweetfavorite