アニ子の家で過ごす日々は平穏そのものだった。
季節は冬がすぎ、やがて春になった。 沖縄の春は、本州よりも早く、2月にはやってくる。
雨が降りがちだった1月よりも、快晴の日が増えてくる。
ユウカはアニ子の家の雑事を手伝っていた。
臨月間際の妊婦たちへ出す食事の給仕や皿洗い、部屋の掃除やトイレの掃除。
この家全体を包む静謐な空気は丁寧な掃除とアニ子のきめ細やかな心配りによって保たれていると感じた。
ユウカはそこで働くうちに、自分のお腹も少しずつ大きくなっていったけれど、身体はいたって健康だった。
時折、フラッシュバックのように、渋沢と過ごした日々が蘇ってくる。
大量にかく汗と、心がキリキリと痛むトラウマは簡単には消えそうにはない。