サトウキビ畑の横を裸足で駆けていた。
足の裏はもうボロボロだった。
血が流れて痛いけれど、止まるわけにはいかなかった。 靴はわざと家に置いてきた。 渋沢が私の姿がないことに気づいて、探し始めるまで少しでも時間を稼ぐために。
車道の脇を走ると、ドライバーたちから奇異な目で見られるから、少しでも裏道を歩いた。 沖縄は、田舎にいくとまだ舗装されていない道も多い。 野良犬や野良猫もたくさんいる。
足の裏には無数の小石がひっついては離れ、時折、足の皮を引き裂くと、そこから青黒い血が流れ出る。
(どこにいくの?)
と心の中の声が囁くが、行く先は自分自身もわからない。ただ、渋沢の元から離れたかった。
日は、やがて落ち、見たことのある風景の中を歩いている気がした。
かろうじて、そこが読谷村と気づいたのは、もう周りが真っ暗になった後だった。
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