どうも皆さん、精、つけてますか!?
この原稿を書いている今日はクリスマスイブ、1年で最もたくさんの人が精をつけようとする日です。うな丼をむさぼる人、麦とろを流し込む人、皆が思い思いの方法で来るべき性なる聖なる夜に備えているでしょう。
ぼくもウツボのタタキを食べて精をつけつつ執筆にいそしんでいます、なんせ明後日締め切りとか言われてますからね。ぼくのクリスマスはいったいどこ……?
ところで「精がつく」という言葉って、なんだかとても日本語らしいふわふわした誉め言葉だなぁって思います。
英訳を調べると「nutritive(栄養価のある)」という言葉がヒットしますが、ちょっと違う感じなんですよね。もっと魔術的というかおまじないというか、「重要な栄養素が摂れる」ということ以上に、元気をもたらすという“イメージ”をくれる、そして時になんとなくアヤシイ魅力があるもの……そんな風に理解しています。
というわけで今回は、精がつく食材としてよく知られる、おどろおどろしくてアヤシイあの生き物について取り上げていきたいと思います。
マムシを捕まえてみよう
今回テーマにしようと思っているのは、ずばり「ヘビ」です。
ヘビを食う話ならもうやってるじゃん、という声もあるかもしれませんが、あの記事は「食味」というポイントで語ってみたもの。
今回は「精がつく」というポイントで見ているので、取り上げたいのはやっぱりこの子
the毒蛇
マムシ!
マムシといえば「赤まむしドリンク」を連想するくらい、精力剤のイメージが強い生き物。生きたまま漬け込んだマムシ酒もまた滋養強壮の効果があるとされ、高値で取引されています。恐ろしい毒の存在もまた、薬としての効能を期待させます。
これらのようなエキスでさえ効果があるのだから、仮に本体を貪りその血を啜ろうものなら、めちゃめちゃに精がついちゃうんじゃないか、それはもう困っちゃうくらいビンビンになっちゃうんじゃないか、そういう期待が膨らむのは当然のこと。
そして今年の秋、運良く捕獲することができたので、試してみました。
捕まえた場所は、大都会を流れるとある大河の、河川敷の草むら。
晩御飯のローストフロッグに使用するためのウシガエルを探しながら、強力なライトで地面を照らしながら進んでいたところ……むむっ、視界の片隅になにか動くものが!
素早く逃げようとするので、とっさに長靴で踏みつけます。
様子を見ると
特徴的な鎖模様!
マムシじゃん!
ずんぐりむっくりとした太短いシルエットですぐにそれとわかります。
踏みつけたのはしっぽのようで、頭をもたげてこちらを睨んでいます。このままだと噛みつかれる可能性があるので、すぐにタモ網の柄で頭を押さえ込み! そのまま手で首の後ろを保持しました。
the悪役顔
40cmくらいの中型で可食部もそこそこありそう。カートゥーンネットワークに出てきそうな凶悪な顔つきでこちらを睨み付けます。
キャップに錐で空気穴を開けたペットボトルに、しっぽからそっとしまっていきます。
すべて入ったらすかさずキャップを締めて、捕獲完了!
はー……
……怖かった!
ここまで文章で書くと冷静沈着のように見えますが、実際はめちゃめちゃ緊張しました。なにせマムシは現代日本において最も多くの人を殺している恐ろしい毒ヘビ。単位量あたりの毒性はハブをはるかに上回り、噛まれると後遺症も残ります。気軽に捕まえていいものでは決してありません。
正直とても怖かったのですが、当連載の毒物関連の記事を楽しみにしてくださっている読者の皆様のために頑張りました。死んじゃったらお前らのせいだからな?(責任転嫁)
もし来年以降狙ってみたいという命知らずがいたなら、浅い水場のある河原で、カエルの声がよく響くところを探してみてください。
さらに草むらや竹やぶなどの身を潜めやすい茂みがある場所ならより良いです。そんなところに「マムシ注意」の看板があったらもう完璧。
時間は暑い時期であれば、日没から数時間がいいでしょう。マムシは昼の間に日向ぼっこをして体温を上げたあと、日が暮れると活発に餌を追いかけるようで、草の茂みから出てくるシーンにかち合いやすくなります。
探すときは、先が二又に別れた1mほどの木の棒や、タモ網をもち、茂みをガサガサと刺激しながら進んでいきます。長袖長ズボンと軍手の着用はもちろん、可能ならば膝くらいまである丈夫な長靴をはくといいでしょう。マムシを踏んだときに、脛を噛みつかれる事故が起こらずにすみます。
でもホントに無茶だけはやめて……食べたければ専門店に行くっていう手もありますからね? ここまで言ったのだから、噛まれて怪我しても責任とれっていうのは無しよ?
マムシを食べると精がつくのか、試してみた
室内に生きた毒蛇がいるという緊張感
捕まえたヘビはその場で締めてしまうのが最も安全ですが、今回は試したいものがあったので、生きたまま調理場まで持ち帰ってきました。(特定動物であるマムシは許可のない飼育が法律で禁止されているので、調理場に着いたら速やかに締めて調理を行うこと)
まず、頭を押さえつけたまま、首を調理バサミでパチンと切り落として、締めます。
気を付けてほしいのは、ヘビは生首になっても当たり前のように噛みついてくることです。
そういうことするから「精がつく食材」っていわれちゃうんやぞ?
熱湯をかけて動きを止めるか、紙でくるんだ上でビニールにしまって捨てるといいでしょう。
グラスに酒(アルコール高めがいいかも?)を注ぎ、マムシの首の切断面を下にしてグラスの上に持ってきます。
軽く絞り出すようにすると
酒のなかに落とさないと血がゼリー状に固まってしまう
血がポタリポタリとグラスに落ちていきます。溜まったところでさっとステアすれば
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