隠されると、剥がしたくなる。

「モテる文体とはなにか?」を徹底的に分析する連載です。今回は、井上都さんの「感情の見せ方」に迫ります。書評ライター・三宅香帆さんの著書『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』から特別収録。


井上都の冷静力
どう感じたのか言ってくれない相手には、逆に想像がふくらむ。



なにか言いたいことがあるから書く。
それが文章を書く理由なはずなのに、この世には皮肉な法則があります。
それは、「心の底で感じてることって、たいてい、その場では言葉として頭に浮かばないのだ」ということ。

楽しい毎日が常態化してるときには、「楽しい」って言葉がなかなか出てきませんよね。
「苦しい」って連呼する人は、それまでが苦しくなかったりして。
いつも怒ってる人は、「怒っている」という感情を麻痺させてたり。

日常的に味わっている感情って、たいていあとで振り返ってみて「あの時はつらかったんだな」「あれこそが幸せだったんだな」と気づくものです。

文章も似ています。本当に思ってることは、実はみんな言葉にしない。
文字にせずにただ状況を書いたほうが読み手の想像を掻き立てることがあります。

井上都さんの文章を読んで、想像してみてください。
行間のいたるところに思いが込められてるけど、言葉にはなってません。



ここには井上さんの感情が溢れているはず。
この文章の中には、ひとつも「直接、感情をあらわす言葉」が見当たらず、起こったことだけが、淡々とつづられています。

もしもここに感情を書き加えるとするならば、こんな文章になってしまいます。

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文芸オタク女子の バズる文章教室

三宅香帆

こんな書き方もありだったのか! 文芸オタク女子が暴露する、「モテる文章の秘密」がいっぱい。文章を書くという行為が、今よりもっと面白くなるはずです。

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lily_13579_lily 感情を抜いて文章を書く。 やってみよう。 https://t.co/KVtiktiPjv 9ヶ月前 replyretweetfavorite