第4章 こじらせないために親がすべきこと
「内弁慶」というシグナル
敏感な子の中には、幼稚園や学校では「泣かない」「言わない」「不満を出さない」で通して、家では家族に激しくあたる「内弁慶」の子がいます。そういう子は、じつは外で「泣けない」「言えない」「不満を出せない」のです。
そして、そのストレスを家でお母さんにぶつける。「あれやって」「これやって」「こうしてくれなきゃイヤだ」「それじゃダメ」とわがままを言い、気に入らないと泣きわめき、依存心が強い一方で、生意気な口をきいたりして、小さいながらも暴君のようにふるまいます。
手に負えなくて困ったお母さんが園や学校の先生に相談しても、ふだん外ではとてもおとなしい子で通っていますから、「気にしすぎですよ」「お母さんに甘えているだけじゃないですか」と真剣に請け合ってもらえない。
「でも先生、本当に扱いにくい子なんですよ、この子と向き合っていると、疲れ果てます」
そう言って、涙目で私に訴えてくるお母さんもいます。
こういう内と外とのギャップがある子どもの心では、何が起きているのでしょうか。
内弁慶になる心の仕組みは、「人生の三角形」という考え方をすると、非常に理解しやすくなります。
この図を見てください。強い他人からされたことを、表の自分が裏の自分にして、自分から弱い他人にやってしまう、こういう三角形が描かれています。
これは、リズ・ブルボーという心理学者が描いた図です(『五つの傷 心の痛みをとりのぞき本当の自分になるために』リズ・ブルボー著 浅岡夢二訳 ハート出版)。
これをいまの内弁慶の話に応用してみましょう。
外では、他人からいろいろなことを言われたり、されたりします。前に説明したように、相手にはその気がなくても、受けとめ方によってどんなことでもストレスになり得ます。そのとき、「イヤだ」とか「違う」とか「やめてほしい」と感じても、その感情を相手にストレートに返せないのが、内弁慶タイプの子です。
そして、家に持ち帰り、わがままが言えるお母さんにドサッと渡す。外で感じたストレスを家でばらまくのです。
この三角形には「自分が自分に対して」という矢印があります。ここが重要です。お母さんにぶちまける前に、もうひとステップあるのです。表の自分(体)がやられたことを、裏の自分(心)に対してしてしまう。
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