TED風】婚活女が自分が結婚できないたった1つの理由を解き明かす

婚活中の女性が、自分がなぜ結婚できないかを、この20年の日本社会を歩んできた自分の半生を振り返る形で解説します。


(パチパチパチ 観衆からの拍手)

どうも、どうも、ありがとうございます。(舞台下手から颯爽と登場し、両手で拍手を抑える仕草)

なんの変哲もない30過ぎの女が出てきて、驚きました?(謙遜)

まずは、私のことを誰も知らないでしょうから、自己紹介から始めたいと思います。

(後ろを振り向き、スクリーンに投影されるプロフィール)

名前:百鳥ユウカ

年齢:36歳

趣味:お菓子作り

将来の夢:お嫁さん


名前は百鳥ユウカ、36歳、ちなみに出身は東京の調布です。そして、趣味はお菓子作りで、将来の夢はお嫁さん……。 あ、ちょっと「可愛い」というのが抜けてますね。 将来の夢は、「可愛いお嫁さん」です。

……はい、皆さんの感想はわかります。

「36歳にもなって何言ってんの?」

はい、文字通り糞みたいなプロフィールですよね。

(観衆から漏れる失笑)

でもね、これ、本気で思っていたんです。3年前までは。

もし、イケてる男性に出会ったら、こういうプロフィールで自己紹介していたんです。

「はじめまして、名前はユウカ。百鳥ユウカっていいます。趣味はお菓子作りで、将来の夢は可愛いお嫁さんになることです!」

痛いですよね。

(観衆から漏れるやや大きめな失笑) もちろん、20代そこそこの女の子がいうには問題ないでしょうが、このプロフィールには大きな問題がある。

それが何かわかるでしょうか?

それは、一部の真実しか書かれていない。ということなんです。


一部の真実とは?


私の真実のプロフィールとは、こんな感じです。



名前:百鳥ユウカ

年齢:36歳

求める男性の条件: 私が何をしても怒らない、私よりも賢い、細マッチョ、経済力がある、笑いのセンスがある、昔からの仲間や心を許しあえる親友がいる、自分の友達に会わせたときに上手く対応してくれる、両親のウケが良さそう、親との距離感がちょうどいい、できれば次男、仕事ができ同性からも一目置かれている、スポーツができ、なんでもそつなくこなせる(カラオケとかボウリングとか標準より高めのスコアを出して欲しい)、嫉妬の加減を知っている(少しはして欲しいけど、すごく嫉妬するのはNG)

男性にしてもらいたいこと: 私の話をちゃんと聞いてくれる、ほどよいスパンで「愛してる」を言ってくれる、ほどよいスパンで「可愛い」と言ってくれる、ボディタッチをしてくれる、ほどよくエッチ、一緒に行った外食では必ず支払いをしてくれる、サプライズで私の友達や自分の仲間を巻き込んで、私の誕生日を祝ってくれる、夏は海辺でBBQ、冬は自宅でホームパーティを開くような感じ?

趣味:お菓子作り

将来の夢:お嫁さん




(会場は爆笑)


「ね、真実は一部だけでしょ。嘘は言ってないけれど、すべての真実も言ってない」


(小首を傾げて、さらに会場の笑いを誘うユウカ)


However!


でもね、私も最初から、こうだったわけではありません。


「愛のある結婚ができれば、他には何もいりません」と思っていた頃が私にもありました。



私の初恋ストーリー


私は中学時代に初めて男の人に恋をしました。初恋です。


その時、私が描いた未来は、実にシンプルなものでした。


憧れの彼と結婚して、幸せな生活ができれば、どんなにいいだろう。 手作りの料理、庭には小さなブランコ、白いカーテンと小さな犬と彼との生活、しばらくしたら子どもが生まれて、幸せは倍々で増えていく。


その頃、時代はバブルの終わりごろ、世の中はまだ好景気を引きずっていて、こういう言葉が流行りました。


「3K」


今では、ブラックな職場を表す言葉として有名な言葉ですが、当時は、今とは意味が違ったんです。


3Kとは、高身長、高収入、高学歴の3つの言葉の頭文字をとった言葉です。 その他、アッシー君やミツグ君なんていう言葉も流行っていました。


私はそれらの言葉を聞いて、こう思っていました。


「上の世代の人たちは、男の人をアクセサリーやATMとしか見ていない可哀そうな人たちだな。たぶん、本当の愛を知らないに違いない。私は将来大人になっても今の自分の気持ちを貫くぞ」


そして、私は成長しました。 高校3年生の時、私は、驚くことに同窓会で初恋の彼と再会して、付き合うことになったのです。


This is it! まさに、これだ。私は将来の夢を今、実現することができる。


その頃の私は、毎日がウキウキ気分でした。学校やバイトの帰り道、彼と一緒に駅前で待ち合わせて、家に帰る日々。 私の周りにはピンク色のオーラが出ていたことでしょう。


私はその後、短大に進学したので、他の人よりも早く就職活動をする必要がありました。


世の中はちょうど世紀の変わり目、未曽有の就職難が私たちの前に訪れていました。


私は勉強嫌いだから短大に通ってたけど、学校には推薦枠があり、毎日学校に来てさえいれば、企業へ就職のあっせんをしてくれました。もちろん、総合職ではなく事務職です。


そうして、上場企業へとそのまま就職できました。


しかし、彼は他の多くの人と同様に4年制大学に通っていたので、2年後、就職氷河期真っ只中へと放り出されてしまいました。


どんなに優秀な人でも就職が難しかったあの頃、彼は早々に就職をあきらめて、当時軽音サークルで組んでいた仲間と、音楽で食べていくと言ってバンド活動に励んでいました。


私は、2度目の「まさに、きた!」という感覚を味わいました。 私は彼の苦境を支えて、お金がなくても愛は維持できると証明してみせる。


きっと、今は試練の時で、私は神様に試されているんだと思いました。


だから私は、迷わず「彼を支える」ことを選択しました。 私がOLをやって稼いで、彼の苦境を支えればいいんだ、と思いました。


私には3Kなんて必要ない。彼が居れば大丈夫。そう心に誓いました。



私がはじめて勤めた会社


私が働いた会社は、東京の真ん中にある大企業でした。


ビルの中で働いている人は、だいたい1000人くらい。 地方にある工場も合わせれば1万人の社員がいます。


私は事務職のOLとして入社したので、大した能力はありませんでしたが、総合職で入社した同期たちは、みな厳しい就職戦線を勝ち抜いて就職しただけあって、高学歴で仕事に対してガツガツしていた優秀な人たちでした。


なので、私の入社した会社には2種類の人間がいます。


総合職でガツガツ仕事をして売り上げをあげる人たちと、そのアシスタント業務をこなす事務職の人たち。


事務職には若い女の子が毎年入社して、職場の花となって職場の雰囲気をよくするみたいな。


たぶん、2000年頃がそんな事務職の女の子をとっていた最後の世代だったのかもしれません。


そして、職場の花として採用されたOLたちは社内恋愛をして、社内の優秀な男性社員と結婚して、寿退社をする、そういった流れが暗黙のルールとして存在していたのです。


なんだか、会社が花嫁候補を採用するなんて馬鹿らしいと今では思うかもしれませんが、まだ昭和の雰囲気を残していた大企業では平然と行われていたのです。


いや、今でもそれに近いことをやってるかもしれませんね。浮気や不倫の候補としてかもしれませんけど。笑


(会場内で失笑が漏れる)


私は、遺伝子上優秀だと思われる男性たちに囲まれて、仕事をするようになりました。


高身長、高学歴、高収入の人たちです。


私は、予防線を張るために、まず「彼氏がいる」ということを公言しました。


やはり、どこの世界でも仕事のできる男性というのは、常にいろんな女性にモーションをかけていますからね。


私は、こんな環境の中でも、彼への愛一筋に生きようと心に誓ったのです。



次第に深まる溝


しかし、そんな思いとは裏腹に、だんだんと肝心の彼との関係にズレを感じるようになってしまいました。 私が働いている時、彼もバイトをしていました。 収入は私より断然少なかったけど、しばらくすると彼は「一人暮らしをする」と言って、一人で都内にアパートを見つけて引っ越しました。 ずっと家を出て自立したいと考えていたようです。 正直、実家暮らしをしていた私は、地元も同じでせっかく家も近いのに、なんでわざわざ一人暮らしをして私から離れて行くのか、理解ができませんでした。 それでも、私は彼を責めたりはしませんでした。「彼を信じて見守る」ってそう心に決めていたからです。


地元にいるときは、できる限り駅で待ち合わせて、少しの時間でも毎日顔を合わせていましたが、彼が一人暮らしをしてからは、会う頻度がグンと下がりました。


当時、流行りのチェーン店の居酒屋でバイトをしていた彼には、すぐに女友達もでき、彼女たちともよく遊びに出かけるようになりました。彼は誰と遊びに行くのか? と聞くと、包み隠さず事実を私に告げるので、そういうことも全て把握してしまうようになったのです。


密かにジェラシーを覚えつつも、私は正直に話してくれる彼に敬意を示し「陰ながら支える彼女」を徹底して演じました。 でも、自分でも気づかないうちに私の中の溝は少しずつ少しずつ、広がっていたのです。


そんな時です。友達の結婚式で私は年上の男性に出会い猛烈なアピールを受けたのです。



初めて知った大人の男性


それまでは、私は彼氏がいると公言していたので、学生時代の友人や会社の同僚先輩からも、アプローチを受けることはありませんでした。


同級生だった彼とは、基本的には割り勘。彼がお給料日だと奢ってくれたり、逆も然り。あまり拘りもなく、自然とある方が支払うような関係ではありました。


デートはだいたい、家かショッピングモールかカラオケ。遠出をすることはほとんどなかったので、5年付き合って1番の思い出は、最初で最後の熱海旅行ですかね。3年目の私の誕生日に彼がサプライズで連れて行ってくれた旅行でした。


そんな時、私に熱心にアプローチしてくる男性があらわれました。


私にアプローチをしてくれた男性は、3つ年上のメガバンクに勤めるサラリーマンでした。仕事熱心で、休日は仲間とフットサル。私からしてみたら、絵に描いたような理想的な男性。


そんな男性でしたが、初めはまったく気持ちがブレることはありませんでした。 だって私には、もうすでに決まった運命の人がいたんですから。 こんなことで、気持ちがブレるわけがない。そう自分に言い聞かせていました。


でもそんな意志も1か月も保たなかった。


食事だけなら……と気まぐれで年上の彼とデートをしてしまったのが、過ちの始まりでした。今まで行ったことのないようなレストランでコースを食べて、支払いはもちろん彼。 その後、なぜかカラオケに行く流れになったんですが、そこで私は頭をガツンと殴られるような衝撃を受けました。 ミュージシャンを目指している彼よりも、歌がうまいんです。 もう、この時の衝撃というか、ショックというか……。


(会場内から笑いが漏れる)


今まで、彼がミュージシャンになることを信じてきたけど、ミュージシャンなんて簡単になれないな、と思わされた瞬間でもありました。そして、定職にもつかずバイト仲間と遊んでいるばかりいる彼を憐れんだ瞬間でもあった。


私が大事に育てて保ってきたはずの大樹があっけなく、ポキって折れた瞬間でした。


「憐れみ」なんていう感情を持ったらダメですよね。 人って恐ろしいもので、そういう感情を持っちゃうと、なかなか変えられないんですよね。


……いや、違います。ちょっと誤魔化しました。


私は、そのサラリーマンの彼を選ぶ正当な理由が欲しかったのかもしれません。 必要以上にバイトの彼を下に見て、サラリーマンの彼の良いところを見つけようとしたことは否定できません……。



私が見つけた”運命の人”は間違いだった


それからは早いもので、1週間後には運命の人だと信じていた彼と別れて、私はその年上の男性とお付き合いをしていました。


そして、あらためて思いました。


私の運命の人は、この人だったのか、と。

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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コメント

21keiei 菅さんの小説、面白いです! 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

sae20160325 前回とぜひ併せてご覧ください。(前回も特別無料で読めます!) https://t.co/TCVvuRjuMw 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

34colorchoice79 こういう話口調の文体好きなんだよな〜読みやすい。自分の人生もこんなふうに書き起こしてみたいな 2ヶ月前 replyretweetfavorite