一般的な結婚式には、「挙式」、「披露宴」、「二次会」という3つの異なる「お祝い」がある。アメリカでよくあるパターンは、「挙式」を教会であげ、「披露宴」をカントリークラブなどで行い、その後で花嫁の自宅などに移動して「二次会」に匹敵するカジュアルなパーティを深夜まで行う。披露宴にホテルを使う場合には、そのままホテルのバーで飲み会になることもある。
自宅ウエディングの良いところは、この3つを同じ場所でできるところだ。決まった時間に挙式や披露宴を終える必要はないし、移動しなくてもいい。借りている会場のルールではなく、自分たちで自由にルールを作ることもできる。「気楽」になる要素がたっぷりだ。
とはいえ、ウエディング・プランナー役やデコレーター役など多くの役割を引き受けていた私は、アリソンとベンの結婚式が始まっても、「挙式」の部分が終わっても、まだ気を休めることができない。新郎新婦が記念撮影を終えて会場に再入場する「ファースト・ダンス」のために『千と千尋の神隠し』のテーマソング「いつも何度でも」をアカペラで歌わなければならないからだ。
ダンス教師役を務めたハナから「踊りが上手ではない2人に合わせるとリズムがどんどん狂っていくから2人が踊っているのを見ないように。そして、テンポが早いと踊れないからゆっくりと」という指導を与えられていた。あの曲をゆっくりアカペラで歌うと、ちょっと間抜けな感じになるが仕方がない。
花嫁の母のお楽しみタイム
この大役を終えて、私は肩の荷をすっかりおろした。これからはもう、司会役のアナとメイド・オブ・オナーのハナにすべておまかせだ。
大きな役割をすべて終えて、ようやく知人や家族とおしゃべりする余裕ができた「花嫁の母」。
頭をクリアにするためにアルコールをまったく飲んでいなかったが、大役を終えたので移動式バーにでかけてワインをオーダーした。今更ながらだが、バーテンダーさんたちにも「花嫁の母です」と自己紹介でき、ようやく何も心配せずに周囲の人とおしゃべりをし、食事もすることができた。
家の前に停めてある移動式バーの前で会話を楽しむ参列者たち
わざとテーブルを割り当てなかったので、参列者が勝手に椅子を動かしてサークルを作ったり、ピクニックのように芝生に座ったりして自由に楽しんでいた。カジュアルな服の人もいれば、ロングドレスで着飾った人もいた。
くつろいでいたら、司会のアナが「ユカリ、これからシュー・ゲームが始まるよ」と呼びに来てくれた。裏庭に行くと、一番良い席を用意してくれていた。いよいよ「花嫁の母」のお楽しみ開始だ。
最前列の「特等席」からシュー・ゲームをiPhoneで録画する「花嫁の母」。録画は最初だけで、あとは大いに笑って楽しんだ。
「シュー・ゲーム」は、新郎新婦がどれほどお互いのことを知っているのかを試すゲームで、自分の靴と伴侶の靴を片方ずつ持った2人が背中合わせに座る。「●●するのはどちらか?」といった質問に、自分だと思ったら自分の靴を、伴侶だと思ったら伴侶の靴を高らかに掲げる。お互いに相手が見えないので、見ている人の笑いをさらに誘う。2人と付き合いが長いハナが質問役を務めた。(最初のウォームアップ部分だけを録画してキャプションをつけてみたので、どうぞ)
この後、ケーキカットが終わったら、今度は夜までダンスが続く。以前にも書いたが、アメリカの通常のウエディングでは、このダンスに生バンドを雇う。けれども、アリソンとベンが決めたのは、自分たちでプレイリストを作ってそれらをiPhoneから音響システムに送って流すというやり方だ。そして、近所に騒音の迷惑をかけないように、ダンスはすべて屋内のリビングルームで行う。
ダンスは大盛況。「土足問題」の解決策としてジョイントクッションを使ったのだが、これが参列者の若者に大ウケだった。踊っても足が痛くなったり疲れたりしないし、ジャンプするのが楽しいというのだ。
大学で社交ダンスのコンペティションをしていたハナと、そのパートナーだったヴィンセントのダンス。さすがに決まっていた。
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