声を上げることの効果を、長い目で見てみる

前回までは社会運動に寄せられる数々の批判を取り上げ、社会運動の「意味」を再考しました。今回は「意味や効果を求める性急さ」について考えます。声を上げることの「意味」や「効果」を考えるときに、少し長い時間で考えてみると、見え方が変わってくるかもしれません。(『みんなの「わがまま」入門』より)

長い目で見てみる

社会運動の意味を広く捉えるために、もっとゆっくり結果を待つということもひとつの手だと思います。

さきほどの「社会を変えないから意味がない」という社会運動への批判は、つまり、社会を変えることに対する強い願望の現れと考えることもできます。願望が強いからこそ、人々は手っ取り早く社会運動の効果を求めるのではないでしょうか。

社会がそんなに早く変わるわけないんですが、政治や社会について「わがまま」を言う人たちに対して、私たちは未来に変わる可能性があるにもかかわらず「そんなことしても変わらないよ」とどこかで思ってしまう。それをいったんやめて、社会運動の効果や意味を長い目で見てみることは有効だと思います。

でも、未来に何が変わるかなんてわかりませんから、今から過去に遡ってみましょうか。

たとえば具体的な社会運動や法改正、また統計資料などを示して、「この運動がこの法律に結びついて、こうした変化があって私たちの意識がこう変わった」という言い方もできなくはないのですが、この時間はすこし小難しい話が続きましたので、過去のドラマや映画、アニメと、現在のそうした作品を比較しながら人々の意識の変化を見ていくのがいいんじゃないかと思います。私は漫画が好きなので、漫画を題材に考えてみましょう。

ここ最近、LGBT、性的少数者の方を題材にした漫画が増えてきたように思います。もともと「百合」とか「やおい」と言われ、必ずしも異性に限らない愛情を描く漫画はあったのですが、それがもっと公に読まれるようになったというか、一般的にコンビニで売っているような漫画雑誌にも掲載されるようになりました。ドラマでも多いですよね、『おっさんずラブ』(2018年)とかすごくブームになりましたね。『弟の夫』(2015〜2017年)という漫画を—2018年にNHKでドラマになったから覚えている人も多いかもしれません—描かれたゲイ・エロティック・アーティストの田亀源五郎さんがあるインタビューでおっしゃられていたのですが、ある意味、ゲイの人に対する認知もこの20年間で相当変わってきたそうです。

1980年頃、『JUNE(ジュネ)』という、男性同性愛を描いた女性向け雑誌が隆盛した時期があった。これもまた同性同士の恋愛が描かれている点では「BL(ボーイズラブ)」と一緒なんだけど、キャッチコピーが「いま、危険な愛にめざめて—」というものでした。「危険な愛」という言葉は男同士の恋愛がふつうではないものだと意味しているようなところが(たとえ意識していなかったとしても)ある。それに対して「やおい」とか「BL」という言い方がされることで、「異性愛がふつうのもので、そうでない愛が異常なもの」ではなく、もっと気軽に受け止められるようになったのでは、というお話を田亀さんがされていて「おお」と納得したことがあります。

漫画では、女性の描写にも変化が見られます。たとえば、1986年に雑誌『モーニング』で連載された家族をテーマにした『ツヨシしっかりしなさい』(1986〜1990年)という漫画があります。

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みんなの「わがまま」入門

富永京子

「権利を主張する」は自己中? 言っても何も変わらない? デモや政治への違和感から、校則や仕事へのモヤモヤまで、意見を言い、行動することへの「抵抗感」を、社会学の研究をもとにひもといていく、中高生に向けた5つの講義。身近な「わがまま...もっと読む

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