「対話勢」の底力が問われている
——対話を通して、じっくりと根本から問題に向き合うことが大事である一方で、ビジネスの現場では「短期的に結果を出せ」というプレッシャーは根強くあると思います。その対立に関して、お二人はどのように考えますか?
宇田川 私の仕事に当てはめて言えば、対話を促したほうが、ビジネスにおけるパフォーマンスが向上するということを結果で証明していかないといけないと思っています。
ピーター・ドラッカーの著書で『産業人の未来』(1942年)というものがあります。この本は、「ファシズム」と「民主主義・資本主義社会」の戦いを描いているんですが、ドラッカーは「結果を出さなければ、我々はファシズムに負ける」、こう言っているわけですね。その思考に通ずる思いが私にはあります。
現在の流れで言えば、日本のスタートアップ企業の規模が大きくなってきて、組織を作らないといけない段階になってきている。その時に多くの経営者が憂うのが、「自社が普通の会社になっていくこと」なんです。
彼らは次の時代の日本社会を担っていく人たちだから、そのタイミングで組織のカルチャーに対話を組み込んでいくことは、しなくてはいけないことなんです。
加えて、会社は立ち上げていなくても、企業が溜め込んでいるお金をうまく引き出して、新規事業を起こしていく「イントラプレナー(社内起業家)」という人たちがいる。彼らにとっても、「対話」というツールの価値を認識してもらう必要がある。それには、私自身の対話力が問われているとも感じていますね。
平田 僕もまったく同じことを劇団員や若手の演出家によく言います。「結果ごとき出せよ」と。前回話に出た『城崎国際アートセンター』に関しても、土地の歴史性はありながらも、行政から出資を受けているから数字的な根拠も示していかないといけない。数字と理念は両輪だと思います。
あとは教育の問題。複数の異なる価値観を持った人が集まって、一緒に何か作業した時の方が、単独でやるときよりもパフォーマンスが上がるという経験を、子どもの頃からシャワーを浴びるみたいにさせるしかないと思ってます。
どんなに優秀な子の集まりでも、1人のパフォーマンスが上がったって組織が潰れてしまったら意味がない。その認識を浸透させる以外に、方法はないと思います。
「協働」の体験は学習する組織をつくる
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