発達性トラウマ
発達性トラウマという概念があります。近年、注目されるようになってきている概念で、
トラウマ心理学ではすでに使われています。
先ほど説明したように、生まれたときには神経の連絡網になんら異変がなかったはずの 人が、強いストレスを浴び続けることで、神経ネットワークの接続の障がいを起こしてし まうというものです。
厳しいしつけ、身体的・心理的な虐待、過保護や過干渉による心理的束縛、家族内不和、 深刻ないじめ、性的虐待、あるいは家族の死による悲嘆などが続くと、子どもは家庭生活 で安心感を得ることができず、慢性的なストレスにさらされます。それが発達性トラウマ となり、不安や恐怖、過剰な緊張により心身のバランスを崩し、心の病に陥ってしまう ケースも少なくないのです。
発達の過程で子どもたちが傷つくと、心の基本構造に変化が生じ、次の3つの症状とし てあらわれます。
1 自尊感情の低下(自分を好きになれない)
2 対人関係、社会性の偏り(友人を作れない)
3 衝動コントロールの問題(感情のコントロールができない)
その3つが最初からだったのか、それともトラウマで起こったのかの判断は難しいです が、そういった症状のある子の脳に、神経ネットワークの接続の障がいが起きているとい うことがわかってきたのです。
自分を好きになるということがとても大事です。自分を好きになれなくなると、友だち との関係が壊れていく、感情がコントロールできなくなる。そして、心の病を招いてしま うのです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。