女から男へ、本来の性で家族を築く

現代の家族像を描く徳瑠里香さんの連載、今回からはトランスジェンダーの友人・ナリさんにまつわるエピソード。セクシャルマイノリティへの理解が深まらない日本で、ナリさんはどのように家族を作っていったのでしょうか。徳さん初めての単著『それでも、母になる』をcakesで特別連載。

女から男へ、本来の性で家族を築く ーナリさんー

 子どもと親である私は別人格だと頭ではわかっていても、「こうあってほしい」という勝手な願いが頭を過ることがある。

—五体満足で、健康であってほしい。
—友だちと仲良く、楽しく過ごしてほしい。
—いつか子どもを産んで、家族を築いてほしい。

 でも、そんな親の願いが、子どもを追い詰めてしまうことがあるかもしれない。自分自身や社会の「普通」と、子どもが「違って」いた時、私はありのままを受け止め、肯定できるだろうか。

 たとえば、セクシャリティ。私は「娘」を産んだけれど、本当の性はまだわからない。

 妹の先輩である安藤朋美(29)は、女の身体に生まれて、28歳で性別適合手術を受けて、戸籍上の性別を男に変え、女性と結婚し、島谷誠になった。

 名前や性別は変わったけれど、小学校時代から彼女改め彼を知る、妹をはじめ私たち家族にとって、ナリさんはナリさんのままだ。「ナリさん」とは愛称で、バスケの試合でのコートネームに由来する。ナリさんと妹は小学生から同じ地域でバスケをしていて、同じ高校でインターハイに出場し、大学ではそれぞれインカレを目指し、社会人バスケのチームメイトでもあった。現在は同じ企業で働いている。

 近年、セクシャルマイノリティの人たちの総称として「LGBT」という言葉が独り歩きしているけれど、性はL(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシャル)、T(トランスジェンダー)の4つに分類されるわけではなく、身体の性と自認する性などのグラデーションである。

 にもかかわらず、日本では、服装や髪型、制服、トイレ、免許証やパスポートなどの身分証明書、職探しの履歴書やアンケート、周りの目のほか、日常において男と女に分けられることがあまりに多く、法的に婚姻関係が結べるのも男と女だけ。世の中が勝手に決めた基準とたまたま自分のセクシャリティがずれていただけで、日常生活や自分の家族を築くことに大きな困難が生じてしまうことがある。渋谷区で「パートナーシップ証明書」が交付されたり、同性婚を認めないのは違憲だとして同性カップルが国を提訴したり、少しずつ世の中が動き始めているけれど、まだまだ現実は茨いばらの道が続く。

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それでも、母になる

徳瑠里香

産まなければ母ではないのか、血がつながらなければ家族ではないのかーー。母になること、家庭を持つことに葛藤を抱えていた著者が、奇跡的な妊娠をきっかけに、母子の関係、そして、さまざまな境遇の女性たちを取材する中で考えた家族についてまとめた...もっと読む

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