8月も半ば、暑さもこのあたりがピークでしょうか。そうあってほしいものですね。わたくしは、いま愛知県に来ております。こちらでは現在、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」が開かれているのです。
ある地域全体を会場として設定し、各所でさまざまな作品を展開する芸術祭は、昨今世界中で行なわれている催しです。このところ、日本でもよく見かけるようになりましたね。よく知られたところでは、イタリアのベネチア・ビエンナーレや、国内なら横浜トリエンナーレ、今年まさに開催されている瀬戸内国際芸術祭などでしょうか。
「ビエンナーレ」とはイタリア語で、「2年ごとに」という意。「トリエンナーレ」のほうは「3年ごと」。つまり、2年に1度開かれることになっているのがビエンナーレで、3年に1度開く場合はトリエンナーレと名乗るのです。
大都市・名古屋を有する愛知県でも、国際的な芸術祭をしようとの機運が高まり、2010年にあいちトリエンナーレの第1回が開かれました。3年後の今年、晴れて第2回を迎えたわけです。
今回は名古屋市内を中心にして、あちらこちらに会場が設けられました。メインとなる愛知芸術文化センターでの展示を観てみましょうか。
同センターが位置するのは、名古屋きっての繁華街、栄の真ん中。すぐ隣には名古屋のシンボルたるテレビ塔がそびえていますよ。文化センターの8~10階は愛知県美術館となっており、そこが全面的に会場として使われています。もともと美術館なのだから当然ですが、落ち着いて鑑賞できる環境はありがたいですね。
10階から回ってみますと、最初の部屋がいきなり、古い木材や鏡で埋め尽くされていて驚きます。一見、廃墟のよう。ですが、一つひとつのモノはちゃんと計算のうえ置かれているようで、場の全体にゆったりとした秩序が生まれているのが感じ取れます。
中国のアーティスト、ソン・ドンによる《貧者の智慧:借権園》という作品は、古い家具や廃材を利用して庭園をつくりあげてあります。なるほど、庭だと考えて空間を巡ってみれば、たしかに歩を進めるごとに違う景色が見えてきて興趣をそそる。ふと視線を移せば、鏡に映る自分の姿が目に入ります。ずいぶん満足そうな、その場に浸りきった表情をしていることに気づいたりして、ちょっと照れくさくなりますよ。