妊娠や出産は、結婚生活を始めて最初に訪れる〝夫婦の危機〟のキッカケになってしまうかもしれないターニングポイントでもあります。近年話題なっている「産後クライシス」という言葉をご存知でしょうか? 産後クライシスとは、出産後に夫婦間のトラブルが増え、良好な関係が築けなくなってしまう現象のことです。女性は、出産によってさまざまなホルモンバランスの変化があります。そのホルモンによって、母親モードに変化することで、夫を拒絶したり攻撃的になったりすることがあります。子どもには愛情いっぱいで女神のような微笑みを浮かべる妻が、夫に対しては般若のごとく牙を向けることが増えるのもこの時期なのです。
妻は夫が思っている以上に深刻に考えている
妊娠、出産の時期と重なる夫婦トラブルの相談は数えきれないほどありますが、今回は美波さん(31歳)のケースをご紹介します。結婚3年目の美波さんと夫の克也さん(32歳)は、もうすぐ5カ月になる女の子のママとパパです。
未だ学生気分が抜けない克也さんは、仕事を言い訳に毎晩お酒を飲んで深夜に帰宅するため、子どもとはもちろん、美波さんとのコミュニケーションもほとんどとれていない状態です。
「これじゃ私一人で子育てしているのと同じじゃない!」と、ついに美波さんはブチ切れ、大ゲンカになってしまいました。
その後、夫の帰宅時間が少し早まったという変化はあったものの、それもたったの1週間。いまはまた元に戻ってしまったそうで、育児や家事を、まるで他人事のようにしか思っていない夫に毎日腹が立って、いまでは顔を合わせるのも嫌でしかたがないということなのです。
「怒ったり泣いたりしている顔しか娘に見せることができないなんて、母親として申し訳ない気持ちでいっぱいです」
美波さんは、夫と離婚したほうがいいのか真剣に悩んでいました。産後のホルモンバランスの乱れに加え、夫の協力が得られない孤独感を抱いてしまうような精神状態が続くと、「産後うつ」になってしまい、最悪な状況になってしまう可能性もあります。
そこで私は、次回ご主人を付き添いというかたちで「一緒にカウンセリングに付いて来てほしい」と話してみるよう美波さんにお伝えしました。
2週間後、美波さんと夫の克也さんがカウンセリングに訪れました。克也さんは「妻の付き添い」という認識でしかないようでしたが、私には別の目的がありました。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。