5・相手のためにならないことは、言い方を考慮して指摘する
これは「4・相手に指摘されたことは、いったん自分の中で受け入れてその意味を考える」とは逆のことをアナタがするということですね。
よく、「あなたのためを思って言ってるのよ」とか「おまえのためにならないから言ってるんだ」という台詞を言う人がいますが、このほとんどが、「その人にとって、相手が改善してくれた方が都合がいいこと」なので、相手のためじゃなくて「自分のため」です。
たとえば、母親が「もっと勉強しなさい! いい大学入れないよ!」と言っていたとしても、子どもがいい大学に入ることを望んでいなかったら、それは「いい大学に合格した自慢の子どもであってほしい」という親のエゴになります。
ここで子どもが、「いやいや、俺将来は映画監督になりたいねん! 本気やねん!」と言ってきたら、子どもの夢を応援するのが、相手の主張を尊重するということです。
しかし、ここで子どもが、映画監督になるための相応しい努力もせずに、映画の勉強はほどほどに毎日遊び回っていたとします。
すると、それを見かねた母親が子どもにこう言います。
「母ちゃんね、アンタが映画監督になりたいって言ってたから、応援してるんだよ。
でもなんだい、アンタは遊び回ってばかりで映画監督になるための努力をちっともしてないじゃないか。
アンタはこれでも頑張ってるって言うかもしれない。
でもね、アンタがなりたいのは三流のしょぼい映画監督なのかい? それだったら母ちゃんはもう何も言わないよ。
それとも、ほかにやりたいことが見つかったんなら言ってごらん。
母ちゃんはそれならそれでかまわないんだよ。
失敗したっていい。なんでもやってみるもんさ。
映画監督じゃなくても、自分の道を見つけたときは死ぬ気で頑張りな」
か、母ちゃん……!!
自分で書いてて、なんてステキな母ちゃんなんだと思ってしまいましたが、前述の言い方が「相手のためにならないことは、言い方を考慮して指摘する」なんです。
では、この子どもをアナタの恋人に置き換えて台詞を変えてみましょう。
するとこんな感じになりますね。
「私ね、あなたが映画監督になりたいって言ってたから、すごく応援してるんだよ。
気を悪くしないでほしいんだけどさ、あなたが映画監督になるために相応しい努力をしてるようには見えないんだよね。
あなたはこれでも頑張ってるって言うかもしれない。
でもね、あなたがなりたいものって三流の映画監督なの? それだったら私は何も言えないよ。
それとも、ほかにやりたいことが見つかったんなら、別にそれはそれでいい。
失敗したっていいし、あなたにはあなたの道を見つけてほしい。
映画監督じゃなくても、自分の道を見つけてそれに突き進むなら、私も全力でサポートするから。
出過ぎたことを言ってごめんね」
み、みさえ……!!
みさえって誰やねん、僕の周りにもそんな名前の人おらんわという話なんですが、こういった場合、言われた側の人間はもちろん、カチンとくるかもしれない。
しかし、ちゃんと向き合ってくれる相手であれば、そのときはイライラしても、後からちゃんと言われた言葉の意味を考えます。
「アイツにあんなこと言わせるなんて、俺はダメだな」とか、「アイツの言うとおり、俺はなんの努力もしてなかったな」といった感じでね。
せっかく相手のためだけを思って指摘しているのに、「ウソつき! 映画監督になるって言ったのに、何もしてないじゃない!」といった感じで、そこに怒りの感情が入るとほとんどの人が聞き入れてくれないんです。
だって、怒ってる人の話なんて、どんないい話であっても聞きたくありませんからね。
なので、「3・相手の事情を考えた上で、言いたいことは言い、聞きたいことは聞く」でお話ししたように、指摘するときは感情的にならず冷静になって、相手の事情を汲み取った上で、発言することが大切です。