こんにちは。今回は少し離れた場所からお便りいたします。いま、福島におります。というのも、ぜひご紹介したい展覧会がこちらではじまったからです。福島県立美術館での「若冲が来てくれました」展です。
同展開催の発端となったのは、あの2011年3月のこと。東日本大震災の報に触れて、遠い米国カリフォルニアに住むある老夫婦が、激しく心を揺さぶられました。ジョーと悦子のプライス夫妻。悦子にとって日本は祖国ですし、ジョーも若いころから、日本人と日本文化に深い愛着を持ち続けていたのです。
自分たちにできることはないか。ふたりは考え、ひとつの提案をしようと決めます。所蔵するコレクションを、東北で展示したいというものでした。プライス夫妻は、江戸絵画に関する世界的なコレクターなのです。色彩を失くした世界を日々生きている被災地の人たちに、色彩あふれる美の世界を届けることが、少しでも慰めになればと考えました。
日本の美術関係者に声をかけて準備を進め、ことし、東北三県でプライス・コレクションの巡回展が開かれることとなりました。春から仙台市博物館、岩手県立美術館と続き、現在は福島県立美術館へ。ここが最終回となります。
三館のうち、ここ福島が、展示スペースを最もゆったりととることができました。会場では、膨大なコレクションの精華をたっぷり楽しめます。