エール大学 〔PHOTO〕gettyimages
お金集めは組織づくりから
多額の寄付を集めるアメリカの名門大学。その背景にはあるのは地道な努力である。一部の識者がいうような、「キリスト教精神」「母校愛」「税制」もあるにはあるだろうが、そんなことだけで多額の寄付は集まらない。今回はこの寄付金の背景を探ってみたい。
先日、エール大学の総長を退任したリック・レビン前総長から連絡があった。彼には学生としても議員としても大変お世話になった。ちなみに彼の息子はノーベル経済学賞の登竜門と言われるジョンベイツクラーク賞をすでに受賞し、数年以内にノーベル経済学賞をとるといわれるスタンフォード教授のジョン・レビン氏だ。この親子が属する二つの大学は、ともに莫大な基金を持つことで知られている。リック・レビン前総長は2兆5千億円を上回る規模のエール大学基金を作り上げた立役者である。
エール、スタンフォードを上回る世界最大の基金集めに成功しているのがハーバード大学だが、筆者は日本の名門大学の基金作りに参画されているある方からハーバードやエールの寄付金集めの裏側について教えていただいた。同氏によれば「お金集めは組織づくりから」なのだという。
徹底した外回り営業
アメリカの名門大学はどこも"集金マシーン"のような組織を持っている。ハーバード大学では約500名の職員が基金集め専門部隊に属している。うち350名はいわゆる外回り営業。国内外の富裕層にハーバードへの寄付をお願いして回るのだ。
そう。いくらキリスト教精神や有利な税制があったとしても、いくらハーバードというブランドがあったとしても、お金は待っているだけではやってこない。営業部隊を雇って彼らに足で稼がせているのだ。
外回り部隊350名のうち300名近くが女性だという。氏は「ここが日本の大学関係が勘違いしている点だ。自分たちができない言い訳にするために、環境や風土の違いばかり強調している。その前に集金組織そのものをもっと調べるべきだ」という。
ハーバードやエールの基金のうち、一般の卒業生を中心に募る少額の積み立て(毎年100ドルといったもの)の割合はわずか5%ほどで、大半は大口のワンショット寄付だという。しかもその多くは遺言状による死亡時の払い込みとなっているようだ。
外回り部隊の大半が女性だという点も興味深い。適度に容姿端麗な女性が選ばれているという。「寄付を迫っても、富裕層に罵倒されにくく、罵倒されても自分に自信があるから耐えられるようなタイプの女性にしてある」とのこと。成功している組織の戦略は戦術の部分まで精緻に練ってある。ビジネスも最後は「感情」であるので、その最後のところまで配慮しているというわけだ。
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