社会性を持つと、写真の枚数は多くなる
タテ位置写真は写真家の覚悟である、写真をやろうと不退転の決意で東京に出てきたのだからタテ位置が基本に決まっている! 前回そう言い切った佐内正史である。が、自身のファースト写真集である『生きている』を見ると、すべてタテ位置というわけでもない。
佐内正史(中央)と高橋恭司(右)
佐内「そう、あれは、最初だから少し甘くしようっていう考えがあった。20代でつくったにしては、ちょっと大人っぽくしてあるんだよね。覚悟はもちろんあったけど。ストイックなタイプが少しゆるくなったくらいのものって好き。『生きている』はそのへんをやっている」
佐内には、『生きている』よりも先にまとめた作品『trouble in mind』がある。そちらのほうが、より甘さを排した硬い印象の写真が多い。
佐内「でもあれも、硬くなりすぎないようにしているところはある。枚数を絞りすぎると硬くなるから、ちょっと増やしたりして。そうやって、社会性を持たせようという感じだね」
高橋「社会性を持って人とかかわった結果本をつくることになると、量はどうしても多くなるしね。本って、量がないと形になりづらいから」
佐内「人と話すとそりゃ楽しいし、前に進める感じがしていいんですよ。だから社会性を持つのはイヤじゃない」
高橋「佐内正史は“覚悟”の人だから、自分だけでやっていると、じゃあ写真なんて1枚だけでいいとか、真っ黒の画面でいいってところまでいってしまう。だから、チームで取り組む本づくりみたいなことが必要になってくるんじゃないのかな」
高橋恭司は、佐内のことを「覚悟のある写真家」と認める。そして、それは、写真を撮っているときにかぎらないと言う。