逆算と積み上げの両方で考えてみる
事前にしっかりスケジュールを立てて、「これでOK!」と思っていても、いざ動き始めると、さまざまな要素が絡み合って「こんなはずではなかった・・・・・・」という状況になってしまうこと、ありますよね。何ごとも、答えは一つではありません。
逆算思考と積み上げ思考という言葉を聞いたことがある人は少なくないはずです。
この二つの考え方の違いと、どちらがいいのかということについて、少し考えてみたいと思います。
「段取り」とは、ゴールに向かっていかに的確に、そして効率良く進めていくかを考えることを指しています。そして、逆算思考とは、まずゴール設定をして、そこに到達するためには今なにをして、どのように進めていくのかを決めて、そのプランに沿って行動していきますから、段取りと基本的なスタンスは一緒です。
逆算思考では、到達したいゴールがあり、そこに向かってアクションを積み重ねていくので、道筋が明確で、行動にいつも基準があります。例えばカレーを作るならば、どんな具材が必要で、それらをどう準備して、どう調理して、どういう順番で鍋に入れていくかなどを考えますよね。
旅でも同じです。目的地を決めて、何時に家を出るか、どういう手段で、どういうルートを通ってそこまでたどり着くのかを考えます。逆算思考をすることで、行動が具体的になります。特にビジネスでは、なんとなく頑張れるところまで頑張りました、というものではなく、「なにを成し遂げる必要があるか」といったゴールと、その締め切りが明確に定められていることが多いので、逆算思考はとても有効でしょう。仕事や家事において、逆算思考は多くのメリットを私たちにもたらしてくれます。
一方で、積み上げ思考は、明確な目的や目標を定めず、とりあえずやってみる、といったスタンスです。こういう風に言うと、あたかも逆算思考の方が優れているように感じますが、必ずしもそうとは言い切れません。皆さんもご存知のスティーブ・ジョブズは大学を中退しました。そして、カリグラフィ(西洋の書道)にハマります。そしてその経験がMacの美しいフォントを生み出すきっかけとなったのでした。
逆算思考はゴールが設定されているから、ゴールまでたどり着くことはできても、歴史的な発明をしたりすることはあまりないかもしれません。ある程度、計算された想定の範囲のことだからです。心理学では内的動機づけともいいますが、「好きこそ物の上手なれ」ということわざのように、「やってみたい」「楽しい」という気持ちも大切にしたいものです。
目標設定したものだけではなく、自分の気持ちに素直に、興味を持ったものにはアクティブに取り組むことが、この変化の早い時代においてはとても大切だと思います。
こうして考えると、どちらも優劣がつけがたいですね。ですから、どちらの考え方もできるようにしておきたいものです。とはいえ、本書のテーマは「段取り」ですから、逆算思考を上手に活用して、皆さんがしっかりと成果を上げられる方法をご紹介していきます。
特に仕事や家事においては、できる限り少ない時間や労力で、できる限り大きな成果を上げるという生産性が大切なキーになってくるので、逆算思考力、段取り力を徹底して鍛えることは有効です。段取り力を鍛えて生産性を高めることで、プライベートを楽しむ時間をしっかりと確保しましょう。そしてプライベートではぜひ、逆算思考だけでなく、積み上げ思考で「やってみたいこと」にチャレンジしてください。それには意味づけは必要ありません。
そこから生まれる、いつもとは違ったアイデアがきっとあるはずです。