しげたまやこ(写真右) 京都府出身。衣装、美術、着ぐるみ、スタイリングとなんでもこなす特殊衣装デザイナー。野性爆弾くっきーやCHAI、水曜日のカンパネラ・コムアイなどの衣装デザインを手掛ける。アイドルでは私立恵比寿中学「でかどんでん」衣装、Negiccoのパペット&衣装/『エビネギ2&3』衣装を担当。水曜日のカンパネラ『メロス』のMVで、アジア太平洋広告祭2018でFILM CRAFT部門コスチュームデザインでブロンズを受賞。
衣装と振付師の同い年対談
竹中夏海(以下、竹中) しげたさんとは同い年というのもあって勝手に親近感があるんですが、実はお会いするのはこれでまだ三度目なんですよね。
しげたまやこ (以下、しげた) 昨年CHAIの「アイム・ミー」のMV撮影の現場が二日間あって、その時だけですもんね。
竹中 その前からツイッターではフォローさせて頂いてて。これはアイドルに限らずですが、ダンスって視覚的表現だから当然衣装との結びつきも強いじゃないですか。
しげた ですね。
竹中 なので衣装を作る人たちのこと、ずっと凄いなぁって尊敬してるんです。タイムラインでアイドルやアーティストさんから「衣装は◯◯さんに作って頂きました!」ってツイートがよく流れてくるんですが、その中でもしげたさんは印象的な衣装をよく担当されてるイメージがあって。変形! イレギュラー!みたいな(笑)。
しげた 非常にその通りです。
竹中 普通のお洋服だけじゃなく、立体物も作れるイメージが強いです。
しげた その境目を行ったり来たりしていますね。
竹中 同い年だと、あの時同じ中学生だった人が、今こんな衣装を作れるなんて……いつ!? いつの間にできるようになったの!?って思います。
しげた 私も思ってますけどね(笑)。なんで振付できるんだろう?って。同い年ってやっぱ熱いですよね。
竹中 しげたさんは服飾の専門学校に通ってたんですか?
しげた 私専門は行ってないんですよ。でも通ってた公立高校が、午後の時間だけ各科に分かれる美術系の学校で。そこのファッション・アート科だったので縫ったり、染めやデザイン画を描く勉強をしてました。とはいえそういう授業は午後しかないから、そこでひと通りの道具を知った、くらいです。
竹中 基礎の基を学ばれたんですね。
しげた で、服作るのはその時から好きだったのに、なぜか大学ではビジュアルデザイン科に入ってしまって。入学してから「あ、やっぱり服作りたい……!」ってなっちゃって(笑)。
竹中 それ気付いたのいつですか?
しげた 大学一年の春(笑)。
竹中 入ってすぐ!
しげた 基本はPCでデザインをする科なんです。だけどすごい苦手だなって気づいて。それなら絵で描く、と提出物をアナログでばかり出していたんですよ。
竹中 すごい、私もまったく一緒です。
しげた ほんと!?(笑)
竹中 みんなが論文のレジュメをPCでちゃんと作って提出する中、私は殴り書きで出したら「竹中さんは、やりたいことははっきりしてて良いんだけど、まずPCを覚えましょうね」って。でもなんか、手書きの方ができません?
しげた できる。
竹中 ですよね! 脳とペンを持つ手が直結してる感覚なんですよね。
しげた そうそう! で、アナログが良いし服が作りたいって早々に気付いちゃったので、勝手にテーマを自分のやりたいことに寄せて服を提出したりしていました(笑)。でもそれで、大学を辞めてやる!ってなるわけでもなく、毎日楽しくほのぼのと過ごしてたんですけど。周りがみんな就活をするようになっても、私はのんきに東京へライブを見に行ったりしてました。
竹中 そのタイミングで東京行ったら、みんな就活だと思ったでしょうね(笑)。
「やれない」って言いたくないから、独学で何でも作る
しげた 本当に何も考えてなくて。行きたい会社も特になかったから。で、たまたまタワーレコードでフリーペーパーの『風とロック』*を見てたら、一番後ろのページでスタッフ募集をしていたんです。それで、うわ、『風とロック』ならいいかもって。
* 博報堂を退社したクリエイティブディレクターの箭内道彦が立ち上げた会社『風とロック』で発刊しているフリーペーパー。
竹中 就職してやってもいいかもって(笑)。
しげた そう(笑)。それで履歴書を送って何度か面接を経たら社長がいて、「君もう受かってるんだけどさー」って言われて。
竹中 すごい、ジャニーズJr.のオーディションみたい!
しげた そこから『風とロック』で2年ほど働きました。その時は編集もするし、美術を作れと言われたら作るし。
竹中 撮影用の美術ですか?
しげた なんかね、鬼太郎の形のポストが欲しいんだって言われて。会社用に。