データが創出する新産業
宮田さんの研究と実践は、産学連携のかたちをとることも多い。人生100年時代と言われる超高齢社会が到来し、少子化も同時に進行する中では健康に対する価値も変えていく必要がある。
「もちろん、病気にならないこと、病気を治すことが必須であることには変わりありません。その一方で、“魅力的な生き方を追求する中で、自然と健康になる”ということや“格差や病気があってもそれを人生の障害と意識しない”という価値を実現することも重要です」
と宮田さんは言う、それでは新しい健康とはなんだろうか。
ポケモンとNianticが提供する「ポケモンGO」では、ポケモンを集める行為を通して、外にでる習慣を身につけることができた利用者が多く報告されている。2社との共同研究では科学的アプローチによってデータを活用する中で、活動量の維持や社会的なつながりの獲得など、楽しさと健康のサポートを両立させるチャレンジを行っているとのこと。
「健康に対する貢献を通じて利益を得るポケモンGOの方針は、データ駆動型社会における新産業を創出する上で重要な要素です。産学連携の価値共創のなかで、手段としての健康を手に入れ、人生をより豊かにしていくという視点が重要になってくると思います」
宮田さんは大阪万博の基本構想委員も務めたが、万博と連動して開発が進められている、大阪駅北口にある梅北(うめきた)のまちづくりにも企業と一緒に取り組んでいる。うめきたは万博の1年前である2024年の開業を目指し、三菱地所や阪急電鉄、大林組の企業連合が取り組むプロジェクトである。その中核コンセプトの1つが先述した新しい健康の価値の創出、“ライフデザインイノベーション”である。
このコンセプトを基に、金沢21世紀美術館を設計した建築家ユニット「SANAA」とランドスケープアーキテクト集団であるGustafson Guthrie Nicholが描いたデザインが、ビル1棟を一つの石に見立てて枯山水を表現するというものだった。
「例えば、京都にある龍安寺の石庭では全ての石の内、どこから見ても必ず1個の石が見えない構図になっています。つまり、どの見方も正解であり正解ではない。何か1つのグランドビューを正解とする都市景観ではなく、多様な価値観が前提とされているのです。人々の多様な生き方があり、自然がもたらす四季の変化があり、その中で様々な価値が生み出されることが意図されています。そうした場を作ろうということが梅北の基本デザインとなっているのです。これからの社会では、ライフスタイルや都市空間、データという新しい資源を連動させながら、新しい価値を共創することが重要になるでしょう」
8つのオフィスを駆使して「新しい価値」を創造する
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