作家・社会学者の鈴木涼美さん(左)と音楽家・文筆家の寺尾紗穂さん(右)が異色の初顔合わせ対談!
人間として父親を見てみよう
寺尾 お母さんを亡くされたのは何年前ですか?
鈴木 この前三回忌をやったので、2年半くらい前ですね。
寺尾 涼美さんのお母さんは翻訳者、研究者でいらっしゃった灰島かりさんで、すごく知的なアドバイスを涼美さんにされていたみたいですね。
鈴木 母はすごくわかりやすく70年代っぽい人でした。もともとは劇団で女優とかをやっていて。
寺尾 うちの母も芝居をやっていました。
鈴木 そんな共通点があったんですね。そう、それでわりと感情に素直で、議論とかも好きだった。朝まで熱く何かについて話すことって、子ども時代には鬱陶しくて面倒くさかったんです。私の中では母親がちょっと前の時代の女の人っぽく思えて、私なんかよりもわかりやすくフェミニスト寄りの考え方だし、なんか……あまり友達にはなれないタイプだなって感じていました(笑)。
寺尾 私もそう(笑)。性格的に。
「父は今年の6月に亡くなったんですけど、小さい頃から離れて暮らしていた」(寺尾) 衣装 spoken words project
鈴木 でも私は、分量だけで考えても母親と話している言葉がすごく多くて。私が今、言葉を使う仕事をする上で、母親からもらった言葉がすごく多いことがわかる。実際に最初のエッセイ集『身体を売ったらサヨウナラ』(2014年/幻冬舎)を出した時は、母親との話を書こうってことではなかったんですけど、書いているうちに母親の言葉が私の中に入っていると思ったんです。寺尾さんもそうだと思いますけど、書く仕事をする上で親との関係も見つめ直すようになりました。
寺尾 私の父は今年の6月に亡くなったんですけど、小さい頃から離れて暮らしていたから、遠く育ったというか。
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