愛 42歳
(アカウント:ねね@童貞ハントFカップ
「アラフォーのドMです。都内在住。童貞さん、学生さんウェルカム。DM、リプ、気まぐれだけどちゃんと返します」)
仕事は怖いくらいに順調だ。今日は、総額3千万のキャンペーンの競合プレゼンに勝ってきたばかり。広告会社の仕事は忙しいけれど楽しい。結果が目に見えるし、常に何かとの戦いなところがいい。前に無我夢中で進んでいる感じがある。
今夜は「祝杯をあげませんか」という部員の誘いを断った。この年になると、会社のメンバーと飲みに行っても気ばっかり遣う。誰か年下のイケメンを呼んで、思いっきり体を解放しようかという考えもよぎったけれど、思うところがあって自宅に帰ることにした。
席に戻ると、私はいくつかの私物をカバンに放り込んだ。
そろそろ、アレをやりたい。帰りにコンビニに寄ろう。
家までは電車で二駅。この二駅分、私はぼおっと人を眺めながら過ごす。車内のほとんどの人がスマホを眺めていて、私自身もツイッターを触っていることはあるけれど、ふと目線を上げると、目の前の世界のほうがよっぽどSNS的だという気がしてくるのだ。老若男女、様々な出で立ちで、それぞれの人生を背負って同じ電車に乗り込む。
そして、私は、無意識のうちに人を選別している。世の中には、勝者と敗者がいる。その人の顔となりを見れば、どちらに属しているかは簡単に分かる。時にはイケメンに出会うこともある。目が合うと、長めに見つめてサインを送ってみることもあるけれど、そこから何かに発展したことはない。せいぜい、何度か視線を感じるくらい。もっとナンパに積極的な国民性であればいいのにね。男の子は、ネットで匿名で捕まえるほうがよっぽど楽だ。