担当氏のおでんチャレンジ
この連載の担当編集者であるS氏(女性)とネタ出しのためのやり取りをしていた際、「身体のパーツというのとはちょっと外れると思うんですけど、『表情』で一回やってみませんか」と言われたので、確かにパーツじゃないけど面白そうだなと思ったのだが、続けて「私、昔、愛想がないという理由でバイト先のおでん屋をクビになったことがあって……」という切なすぎるエピソードを頂いた。思わず爆笑してしまったので枕に使わせてもらったが、よく考えると笑い事ではない。「女子と表情」は、下手すると一生の命運や生死にまでも関わってくるクリティカルなマターだ。例によって釣りタイトルで姑息に衆目を集めながらこのシリアスな問題について掘り下げていきたいと思う。
笑ってハニー
表情と言っても細かいことを言えばキリがないので、ざっくり「喜怒哀楽」で分けさしてもらいまひょ。というわけで第一回は「喜」、喜びの表情です。要するに笑顔ですね。笑顔というのは基本的に「よいもの」とされている。が、「女子と笑顔」となると、これがまたいろいろな「やなかんじ」が付きまとってくるのですよ。
女は愛嬌! 笑顔が一番の化粧! むくれてると可愛くないよ! ほらおねーちゃんもっと笑って笑って! ブスでも愛想よくすれば場が明るくなるんだからさあ!
これらの鬼クソファッキンワードをぶつけられずに大人になれた女がどれほどいましょうや? 別に日本に限った話でなくて、欧米でも女性に「SMILE(笑って!)」というのは場合によっちゃ侮辱、性差別の一環として認知されとります。笑ってっていうのがどうして侮辱になるの? とお思いの御仁、じゃ同じ言葉を男性や目上の人にも言いますかね? 飲み屋で隣になっただけの初対面の男性に「もっとニッコリしてよ! 愛想がないとモテないよ?」とか、取引先の部長さんに「そうカタくならずに笑顔、笑顔!」とか言いますかい?ということなんですね。相手の表情、感情を自分に都合がいいようにコントロールしようとするのは、相手の感情を尊重せず、見下しナメくさっているからできることなのだ。
その笑顔は何円か
感情労働という言葉を最近よく聞くようになった。ウィキペディアによると『感情が労働内容の不可欠な要素であり、かつ適切・不適切な感情がルール化されている労働のこと。肉体や頭脳だけでなく「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要」である労働を意味する。』とのこと。つまりスマイル0円のことですね。本来「笑顔」は業務に関係ないのに、必要以上にニコニコ人当たりを良くしないと責められるシチュエーションのこと。担当S氏がおでん屋をクビになったのもそのせいだ。おでんを作って売ることは問題なくできても、ニッコリきゅるるん☆とした接客ができないと解雇されてしまう。腹の立つ話である。笑顔で大根がしみしみになるのか? 微笑みではんぺんがふっくらするのか?
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