ハワイでの結成会見のアンバランス
これはもうこの連載とは直接関係ないかもしれません。でも、前回「アイドル性とはなんなのか」についてちょうど書いたところなので、私のアイドル観、もっと言えば人格形成に多大な影響を与えたひとりのアイドルの話を書いておきたいと思います。
1999年9月15日、朝、中学校へ行く準備をしていた私の目にテレビからあるニュースが飛び込んできました。当時大人気だったジャニーズJr.から、新しいグループがデビューするというのです。
(嵐!? なんだその名前!?!? てゆうかメンバーだれ!?)
(潤くん!? あぁ選ばれてよかったぁ)
(にの!? 友だちが応援してるからよかったなぁ)
(相葉ちゃん!? うんうん人気あるもんね)
(翔くん!? 学業優先のイメージがあったけどデビューするんだ!)
(もうひとりは……? 誰だろ? このアンニュイなお兄さん……。てゆうか、タッキーいないの!?)
当時、滝沢秀明率いるジャニーズJr.は、今でも「Jr.黄金期」と語り継がれるほど大人気で、クラスの女子の大半がひとりはお目当てのメンバーを見つけ、彼らの冠番組『8時だJ』を毎週欠かさず観ているほどでした。
その中から特に人気の高かったメンバーが選ばれてデビューすることは、当然といえば当然の流れで、新グループ「嵐」はほとんどのファンが納得のいく人選だったと思います。Jr.のリーダー的存在であり、人気も牽引していた滝沢は、実はジャニー喜多川社長と共にメンバーを選出する立場にいたことは、のちに本人の口から語られたことですが、彼不在のデビューという点だけはやはりかなり意外、というのが世間の反応でした。
とはいえ、ジャニーズJr.の人気が最高潮に高まったタイミングで、事務所からKinKi Kids以来二年半ぶりのCDデビューは注目度が非常に高く、それに合わせての会見はハワイの船上という異例の好待遇の中行われました。
ところが、蓋を開けてみるとメンバーのほとんどはなんだか所在なげで困っているようにさえ見えた、というのが当時の私の印象です。その中でもとりわけそうした空気感を放っていたのが大野智だったのだと思います。決してやる気がないというのとも違う、「トホホ……」といった声が今にも聞こえてきそうな、「なんでこんな大ごとに巻き込まれているのかな……」とでも言いたげな男の子たちがハワイで「俺たちが、嵐~!」と言っているのです。
そのアンバランスさに思わず笑ってしまった記憶がありますが、同時に「アイドルのはずなのに、なんて正直な子たちなんだろう」と親近感が湧いたことも覚えています。そして私もその時に感じた親近感がのちに日本中に浸透し、彼らは誰もが認める国民的アイドルになっていきました。