頭の中は余白と空想だけ
──写植屋を辞めるキッカケってあったんですか?
山口 DTPはまだ出てこないんだけど、電算写植の時代になってくるんだよ。で、その頃に「あ、版下ってなくなるな」って思ったわけよ。会社的にはゆくゆくはコンピューターを導入して……って話も出てたんだけど、オレはメカが一切ダメだし、嫌いだし、そんなのやりたくねぇなって思ってね。
──当時の山口さんの最先端メカはビデオデッキですか?
山口 今でもほぼそんなもんだよ。その頃はATMは使えないし、洗濯機とか炊飯器の使い方なんかは最近覚えたんだから。ちなみにビデオデッキの録画はいまだにできないね。あ、そういえばワンセグテレビの付いてるポータブルDVDプレーヤーも持ってるな。映画もテレビもそれで観てるからすぐ壊れちゃうんだよ。
──それが今現在の山口さんの最先端機器ですか?
山口 そうだよ。未来っぽくない? 『ブレードランナー』っぽくない?
──80年代の未来ですよ(笑)。
山口 オレにはそのぐらいがちょうどいいな。だからそのプレーヤーをパカっとあけてAVを観てオナニーしながら、「こりゃサイバーパンクだな」ってウィリアム・ギブスン感じてるよ。
──まったく意味が分からないですよ! でも、山口さんが機械をまったく持たないのって、機械に弱いとかそういう次元じゃなくて、そのだいぶ前の段階の、メンドくさいからなんじゃないですか?
山口 そうなのよ。嫌いなものとかメンドくさいと思うものとかを無理して取り入れないようにして生きてきたからさ。
──でも、スマホを持つのってたしかにメンドくさいですけど、大多数の人がその先の利便性を取るから、ちょっとしたメンドくささは超えるじゃないですか。スマホを持たないことの方がメンドくさいというか。
山口 だからオレは童貞なんだと思うよ。メンドくささを超えたらセックスできるんだろうな。
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