振付師はどのように振付を考えているのか
振付師をしていると「振りってどんな風に作るんですか? 降ってくるの?」なんてことをよく聞かれます。降ってくるのか、湧いてくるのか、はたまた突如ひらめくのか、その感覚はさまざまだと思いますが、私の場合は“導かれる”という表現が近いと思います。振りを考えながら曲を聴いていると、その音に合わせてどう動けば気持ちいいのか、自然と大枠が見えてきます。これは、0から1を生み出す作業というよりも、土から化石を発掘するような感触と似ているのではないかと思います。振付の糸口は必ず、音楽の中にあるからです。
メロディやリズムのほかにも、たとえばクラシックバレエやオペラ、ミュージカルのような演劇的内容を持つ作品の場合には、その物語が振付のヒントになります。筋がないものでも舞踊にはテーマを設けることが多いので、ぼんやりと見えてきた振付の輪郭をはっきりさせるためには、それらが大きなヒントとなります。現在では一括りにできないほどジャンルが多岐に渡るアイドルソングにも、歌詞は必ずあります。そのためアイドルダンスでそれを表現する振付は、欠かすことのできない要素となっています。歌詞は振りを作る旅を導く地図になるのです。
もちろん、昭和にアイドルが歌謡曲で歌い踊るようになる以前から、歌詞と動きが直接リンクしているダンスは存在しました。代表的なものでいえば、ハワイの民族舞踊で有名なフラダンスでしょうか。歌詞に合わせたハンドモーションと呼ばれる腕の動きが知られています。古代、まだ文字を持たなかったハワイ先住民にとって、舞踊とは娯楽や宗教的な儀式のほかに、ハワイの歴史や神話を記憶し伝達するための大事な手段でした。文字の代わりという役割があるため、手話のように「私」「太陽」「花」「波」「愛」など、それぞれの言語に対してひとつの決まった動きがあります。
振付師が頭を抱える「キャッチー問題」
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