オフィスハック

飛び交う情報から最適解を導きだせ

「これぞ日本版キングスマン」「スカッとする!」「早く映像化して」Twitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』より第2話「ミニマル製菓の社内調整」をリバイバル連載。(あらすじ)「うちの不祥事を世間様が知る前に社内調整せよ」東京丸の内の大企業T社。人事部直轄の特殊部署「四七ソ」に今日も新たな指令が下る。年の差バディ香田&奥野がスーツに身を包み、オフィスでクソ野郎共を撃ち殺す!

◆19◆


「クソッ、このまま関連部署まで動員するとなると、ヤバイぞ」

 おれは舌打ちした。

 直後、第二人事部側の事務方部隊から絶叫。

「アーッ!」「四七ソにやられたぞ!」「対応急げ!」「五六シス、五六シス、東側に援軍を!」

 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!

「突入?」

 おれは周囲を見渡した。三台続きのデスクの影には、おれと奥野さんと井上とアスカン君。四七ソの全戦力は、ほぼこの中央部に位置するはずだ。なら突入したのは誰だ?

「鉄輪! これどうなってんだ!? 事務方がやってるのか!?」

『確認中! こっちも情報錯綜! そろそろキャパ超えちゃうよ!』

「鉄輪、監視カメラとショルダーサーフで何とかならないか!?」

『無理! 監視カメラが全部破壊されてる! みんなのインカムにある視点カメラだけが頼り!』

「室長は!?」

『上の承認を取りつつ、そっちに向かってる!』

「クソッタレ……! 急いでくれよ……!」

 おれは奥歯をかみしめた。せっかく炎上を止めたってのに、結局T社の構造的欠陥のせいでミニマル製菓は被害を受けるのか?

「ヒイイイイイイ!」「助けてエーッ」

 第二人事部側に保護されていたミニマル社員数名がパニックを起こし、緩衝地帯を超えてこちら側に逃げ込んできた。おいやめろ、調整されるぞ。

「援護します、奥野さん」

「はい……!」

 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!

 おれたちは危険を冒して立ち上がり、デスクの上に並び立って敵の弾を集め、一般社員の保護を手助けした。無事、避難者たちは南側の陣地に逃げ込み、第一人事部の事務方部隊がそれを保護していく。

 パーティション・バリケードの影では、井上が内線電話の受話器に向かって密かに指笛を吹いていた。内線電話網を音波ハックする能力、パイドパイパー・ジョンだ。井上、今日はサエてるな。敵側の内線電話が鳴った。発信元も第二人事部本部に偽装しているんだろう。五六シスがそれを取り、敵からの射撃が一時的に和らぐ。ナイス援護だ。片桐がキレて、受話器を内線電話に叩きつけるのが見えた。

 そろそろ限界だ。おれと奥野さんは机から飛び降り、またバリケードの陰に隠れる。

 短い睨み合いの後、今後は南側から不意に悲鳴が上がった。

「や、やられました! 侵入されています!」「事務方二名死傷! ミニマル製菓の課長、負傷!」「四七ソ、増援願います!」

 マジかよ。

「鉄輪、被害は本当か!?」

『確かにやられてる! 東側の奥のほう、一番事務方の防御が厚いところの裏をやられた!』

 おれたち四人が中央部を守ってるんだぞ?

「アスカン、敵の突破は見えたか!?」

「誰も緩衝地帯超えてないデすよ!」

「奥野さん、ドア側は!? 裏側から入られてッてことはないですか?」

「ありません!」

 なら何故だ。わけがわからない。まるで見えない死神だ。膠着して塹壕戦になったオフィスの端から端に渡って攻撃を仕掛けるなんて芸当は、それこそ、オフィスハック能力でも持っていなけりゃ……。

「おい、もしかして」

 おれは汗を拭った。

「五六シスにテイルゲイターが居るってことか」

「あ……」

 井上が理解したようで、眉をひそめた。

「さっきも、同じようなことが起こったんスよ、そういえば。緩衝地帯から逃げ遅れたミニマル社員が、こっちの陣地に来る……それに合わせて、完璧に守ってたはずのこっちの陣地内に攻撃が加えられた……」

 おれは午前中の睨み合いを思い出した。

「向こう、五六シスの増援は来てるのか?」

「いや、来てないと思います」

『五六シス、二人しか動かしてないよ、それは確か!』

「てことは、五六シスの奴らは、最初からいるあのツーマンセルだけか?」

「そうスね、多分」

 おれはこめかみに指を押し当て、今朝の光景を思い出す。

(((……「こんにちは、五六シスの雨宮です」と、眼鏡をかけた地味目の女が言った。年齢はアラサーくらい。ちょっとかわいい。「こんにちは、同じく五六シスの片桐です」と、その後ろに控えるロマンスグレーの髪の男。穏やかな表情だが、仕草一つで、相当の修羅場を経験した切れ者だとわかる……)))

 おれは防弾パーティションから一瞬、頭を出して、敵方の陣地を確認した。

 片桐が第二人事部の事務方部隊を指揮しているのが見える。

 だが、雨宮の姿が見当たらない。

『みんな聞いて、もうすぐ室長がそっちに到着するよ!』

 もしかして、雨宮がテイルゲーターか……?

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ダイハードテイルズ

これぞ日本版キングスマン/会社あるあるが笑える/スカッとする!/早く映像化して! などTwitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』(著:本兌有・杉ライカ、画:オノ・ナツメ)をリバイバル連載!(あらすじ)「ウチの不祥事が...もっと読む

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