オフィスハック

堕落した若手社員に明日はない

「これぞ日本版キングスマン」「スカッとする!」「早く映像化して」Twitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』より第2話「ミニマル製菓の社内調整」をリバイバル連載。(あらすじ)「うちの不祥事を世間様が知る前に社内調整せよ」東京丸の内の大企業T社。人事部直轄の特殊部署「四七ソ」に今日も新たな指令が下る。年の差バディ香田&奥野がスーツに身を包み、オフィスでクソ野郎共を撃ち殺す!

◆15◆


「ヤバイよ! 壁が! 隠しオフィスがバレたかも!」

 危険を告げる若手社員の声は、中から溢れるお祭り騒ぎの声にかき消された。

「イェーイ! ミニマル製菓の株価、ガンガン下げてる! 超儲かるわ!」「ちょっとおれにもツイートさせてよ、トランプ!」「もうブロックされたって!」「ギャハハハハハ! んじゃ、クリントン!」「もう2倍量ショートしちゃおうかなー!」

 堕落だ。どこかの営業部か広報部と思しき若手5、6人がソファに座り、机の上のPC画面や手元のスマホを見せ合いながら爆笑していた。

 数分前まで、おれが頭の中に思い描いていたアジトの光景は、スーパーハッカーの隠しアジトみたいに画面がいくつも並んでいるやつだった。

 それが、現実はこれだ。

 隠しオフィスはコンクリート打ちっ放し。パーティションで区切られたそこそこ広い空間で、真ん中部分だけ、LAで流行りのコワーキングスペースみたいにこじゃれてる。おれは壁の本棚に並んだネカフェばりの品ぞろえの漫画本、エスプレッソ・マシンとバターコーヒーのカートリッジ、やたら高そうなソファ、変なデザインの照明器具などを一瞥した。

 そして、そこで浮かれ騒ぐクソ野郎ども。

 堕落だ。おれの中の怒りが収斂していく。つい数分前まで、おれの苛立ちは第二人事部やT社の構造といったものへ散漫に向けられていた。その怒りが、このクソ野郎どもに収束していく。こんな浅はかなクソ野郎どものせいで、あの清水主任や、青ざめた顔で出てきた電話対応社員が血を吐きそうなほど苦しんでいるのかと思ったら、まあ、止まらないよな。

「何?」「壁がどうしたァ?」

「壁……壊されてた!」

「ていうか……そいつ誰?」

 ソファに座っていた一人が、違法3Dプリント拳銃を持って立ち上がった。

「えッ?」

 コーヒー缶を持った若手社員が振り返った。手がガタガタと震え、ミルクコーヒーが床にぶちまけられた。

 おれがテイルゲートしてきたことに気づいたからだ。

「全員抵抗をやめろ、四七ソだ!

 おれは奥野さんの増援も待たず、調整用拳銃を構えた。

「人事部の犬にバレたぞ!」「殺せ!」「おい! ヤバイ! 増援! 増援!」

 クソ野郎どもはソファの上に置かれた3Dプリント拳銃や3Dプリントカタナを大慌てで構え始めた。さらに奥から、1ダース近い増援のお出ましだ。

「ここ絶対バレないんじゃないのかよ!?」「クロキさん今どこ? 報告しろ、ヤバイって!」「スマホ守れ!」「ブッ殺せ! とにかくブッ殺せ!」

 クロキって誰だ。

 BLAM! BLAM! BLAM!

「鉄輪、調整に入った。クロキってやつが関連部署にいないかどうか調べてくれ」

 おれは防弾ブリーフケースで弾を防ぎながら前進し、右、左、右と順に発砲してクソ野郎どもをどんどん調整する。

 BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!

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本兌 有,杉 ライカ,オノ・ナツメ
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2018-04-19

この連載について

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ダイハードテイルズ

これぞ日本版キングスマン/会社あるあるが笑える/スカッとする!/早く映像化して! などTwitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』(著:本兌有・杉ライカ、画:オノ・ナツメ)をリバイバル連載!(あらすじ)「ウチの不祥事が...もっと読む

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