オフィスハック

この気持ちを忘れちゃいけない

「これぞ日本版キングスマン」「スカッとする!」「早く映像化して」Twitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』より第2話「ミニマル製菓の社内調整」をリバイバル連載。(あらすじ)「うちの不祥事を世間様が知る前に社内調整せよ」東京丸の内の大企業T社。人事部直轄の特殊部署「四七ソ」に今日も新たな指令が下る。年の差バディ香田&奥野がスーツに身を包み、オフィスでクソ野郎共を撃ち殺す!


◆13◆


『これから状況と作戦を簡単に説明するね、オーケー? 音声はクリア?』

「はいよ」

「大丈夫です」

『目的地は……』

「大阪」

『そういうのはいいから』

 鉄輪が冷たく言った。当然、大阪というのはブラフだ。赤い飴で井上はそれを知らせてきた。これから向かうT社社屋内のポイントがおれたちの本当の目的地であり、調整対象だ。

『問題部署はそこからそこそこ離れてる。第2棟の22階』

 鉄輪の声を聞きながら、おれと奥野さんはT社巨大複合社屋の中を進んだ。すでに内側には、強化ケブラーの防弾ウェストコートを着込んでる。第1棟と第2棟を繋ぐ15階の空中廊下を通過し、スロープから透明螺旋階段を3フロア上がって……。

「つくづくどうしようもないな、ウチの社屋は」

『何? どうしたの今更』

「今更とか関係ないよ。この気持ちを忘れちゃいけない。絶対おかしいって」

『だから何が』

「複雑すぎるだろ。ブチ抜きのエレベーター1個で全部行き来できるようにすりゃいいんだ」

『ああ。そういう事。それは仕方ないね。セキュリティの……』

「セキュリティ、何の為のセキュリティなんだよって話でしょ。テレビ局なんかはテロリスト対策でビルのつくりを複雑にしてるなんて話も聞いたことあるけど、ウチは何なの? 結局、社屋が迷路になってるせいで、系列会社間が極端に分断されちゃって、で、俺らみたいな調整部署を動かさないといけなくなってるわけでしょ。本末転倒じゃないか。グチャグチャだよ。パスワードもそうだけどさ」

『また溜まってる』

「溜まってるよ。ええと……それで、22階のどこだって?」

『うん、22階の、どこか』

 さすがにおれはその説明に引っかかった。

「ハ? どこか?」

『そう言うしかないんだよ』

 おれをわからない子供扱いするような態度で、呆れたように肩をすくめる鉄輪の姿が見えるようだった。

『目星がついてる場所の地図情報が無いんだよね』

「オフィスの引っ越しか何かか」

『そういう事。22階はこの半年で3回ぐらい引っ越しがあったみたいだから。2度目の会社が電話帳データベースの更新を適切にやらなかったせいで、情報が抜け落ちちゃったみたい』

「出た……」

 おれは頭を押さえた。奥野さんが横目でおれを見る。

『いわゆる、地図にないオフィスってやつ』

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本兌 有,杉 ライカ,オノ・ナツメ
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2018-04-19

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ダイハードテイルズ

これぞ日本版キングスマン/会社あるあるが笑える/スカッとする!/早く映像化して! などTwitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』(著:本兌有・杉ライカ、画:オノ・ナツメ)をリバイバル連載!(あらすじ)「ウチの不祥事が...もっと読む

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