オフィスハック

フェイクニュースには気をつけろ

「これぞ日本版キングスマン」「スカッとする!」「早く映像化して」Twitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』より第2話「ミニマル製菓の社内調整」をリバイバル連載。(あらすじ)「うちの不祥事を世間様が知る前に社内調整せよ」東京丸の内の大企業T社。人事部直轄の特殊部署「四七ソ」に今日も新たな指令が下る。年の差バディ香田&奥野がスーツに身を包み、オフィスでクソ野郎共を撃ち殺す!

◆10◆


「そういえば、こないだのONDOの件なんだけど……」

 60階空中テラス行きエレベーターの中で、室長が切り出した。

「はい」

 おれは映画館で見たサカグチの顔を思い出し、ごくりと唾を飲んだ。

 奥野さんの表情も、若干、硬かった。

「危なかったよねえ、あれ。あのまま完成されてたら、いつか炎上してたのは間違いないけど……。三融マの調査の結果、それよりもっとマズいことになってた可能性があるって」

 室長はスマホをいじりながら、いつもの緊張感のない口調で続けた。三融マは、第三IT事業部金融マーケティング部門の略だ。四七ソと命名規則が違う。第三事業部は丸ごと別会社からの合併だから、その命名規則が残っているのだ。

「というと、どういう事です?」

「フェイクニュースの一斉拡散による、相場操縦などを狙っていた可能性、大、だってさ。こないだ、北朝鮮のミサイル発射が誤報だったってニュース、聞いた?」

「ああ」

 おれは頷いた。あれでだいぶ肝を冷やした。だがおれはもうドル円の不安から解放されたので、ビクともしない。鋼鉄の精神を得たのだ。

「なるほど……」

 奥野さんも気づいたようだった。

「ミサイル誤報の件は本当にただの誤報でしたが、仮にONDOが完成していたら、そういうものを意図的にやれていた可能性がある、と」

「そうそう。今はもう、株式も為替もみんなAIじゃない? そういうニュースがバズってるのをAIが見た途端、精査もせずに、ドンと相場を動かしちゃうわけ。奥野さんがダンプスター・ダイブで復元した文書あるでしょ」

「はい、あの時シュレッダーから」とおれは相槌を打つ。

「あの後も実はちょっと残業してもらってね、色々復元してもらったんだわ」

「そうでしたね。その分析結果……という事ですか?」

「そういうこと。下手したら、ONDOが世界恐慌の引き金を引いていたかもね。二人とも、ご苦労ちゃん」

「……他には何か、掴めたんですか?」

「いや? 今のとこ、そんなもんだね。大事故を防げて、めでたし、めでたし。もちろん金一封くらい渡してやりたいけど、ちょっとT社今季の営業成績悪いから、無理みたい。頑張って食い下がってみたんだけどねえ」

「そうですか……」

 おれは溜息をついた。別に金一封なんて最初から期待していなかったし、そういうのは、えてして、本当に大事故が起こってからじゃないと支給されないものだ。おれが溜息をつく理由は別にある。

「サカグチの件は、他になにも?」

「香田ちゃん、あの事件、やけに食いついてくるよね。いつももっと淡白なのに」

「そりゃあ……主犯を取り逃がしてますから」

「悔しいってこと?」

「そうですよ」

 おれは……なんとなく、映画館の件の話をしそびれた。

「サカグチの奴は、元T社グループの社員だったんですよね?」

「そうね」

「四七ソみたいな事をしていた人事部系の秘密部署が解体され、そのメンバーだった」

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2018-04-19

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これぞ日本版キングスマン/会社あるあるが笑える/スカッとする!/早く映像化して! などTwitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』(著:本兌有・杉ライカ、画:オノ・ナツメ)をリバイバル連載!(あらすじ)「ウチの不祥事が...もっと読む

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