38歳のとき、僕の人生は一度終わってしまった。
僕は、それまで稼いできた20億円以上のお金を、ある人に使い込まれた。
使い込まれただけでも最悪だけど、もっと最悪なことに、やったのは僕が一番信用していた人だった。 今、思い出そうとしても、当時の記憶はほとんどない。
使い込まれたとわかってから、もう、何もかも信じられなくなった。
仕事なんて、とてもじゃないけど、やろうと思えなかった。できなかった。
朝、目が覚めて、全部がウソだったんじゃないか、と思う瞬間があった。でも、すぐに胸焼けと吐き気が混ざったみたいなものがこみ上げてきて、やっぱりあれは本当だったんだと気づく。
テレビでお笑いタレントが何かを言って、周りの人が腹を抱えて笑っている。
スーツを着た人たちがカバンを持って会社に向かっている。
宅配ピザのバイクが、誰かの家に向かって走っていく。
そんなのを見ていると、「ああ何も変わっていないんだ。いつもと一緒だ」と思えてくる。でも、しばらくすると、やっぱりダメだった。
起きている間中、ずっと苦しくて、寝られない夜もしょっちゅうだった。
そんな日が、何日も何日も続いた。
当時の僕は、「信用している人にお金を使い込まれた」なんて誰にも言えなくて、たった一人で苦しんでいた。
後輩や友だちから、「ツーさん、飯でも行きましょう」と言われたりするのが、とてもつらかった。僕はいつも明るく見えるらしいけど、本当はそうじゃない。無理して格好つけてるときもあるんだ。
よく生きてこれたと思う。
よく乗り越えられたと思う。
いや、完全に乗り越えられたかというと、ちょっと自信がない。100%大丈夫と言えるほど、僕は強い人間じゃない。
でも、本当に少しずつだけど、前を向いて生きていこうと思えるようになった。
2017年に放映された「しくじり先生」というテレビ番組を見ただろうか?
あの番組で、僕は金銭トラブルのことを初めてみんなに告白した。しくじった経験を話せばちょっとでも誰かの役に立つかな、と思ったからだ。
それまで、テレビで金銭トラブルを告白しようなんて考えたこともなかった。告白できるようになるまでに7年も時間がかかったんだ。