いらっしゃいませ。
渋谷で17年、ワインとボサノヴァのバー「bar bossa」の店主をしております、林と申します。バーって行きますか? 最近はあまり行かない人の方が多いですよね。でも東京という大都市では毎晩のように、男女の恋愛劇やマスコミ人の虚栄心、接待に見せない接待、成功者への嫉妬陰口大会といった心理劇が繰り広げられています。そんな話をこっそりみなさんにお伝えできたらと思ってます。
女性を誘うお店、男性を試すお店
さてデート。デートって楽しいですが、ほぼ全員が飲食店に立ち寄ると思います。飲食店に入ると相手の色んなことがわかりますよね。お箸の持ち方や魚の食べ方なんかはもちろん、男性が見栄をはってしまう問題とか、支払いのことや店員とのやりとりなんかで、その人の他ではわからなかった本質的なことが見えてきます。
そこで僕はこういうお店をオススメします。やっぱり和食です。長くやっていて清潔で普通に焼き魚や煮物があって、ジャズがかかってなくて、生ビールが美味しくて、店員が全員50歳以上のなんでもない街のお店です。仮にあなたが美味しいお店に詳しくなくても、そういう場所だと落ち着いて彼女と色んな食事の話が出来ます。小さい頃の母親の手料理や学生の時に飲み過ぎて失敗した話。楽しいですよね。まず最初はお互いが落ち着ける「アウエイではないホームの場所」を選ぶにこしたことはないんです。
そうなんです。アウエイとホームの問題なんです。
ですから、逆に女性であるあなたが「この男、大丈夫かなあ。ホントにこの男と結婚しても良いのかなあ?」なんて考えたら、彼をアウエイの場所に連れていけば良いのです。外国で全く言葉が通じない場所とか無人島とかのアウエイの場所に行ったら「男力」が見えてきますよね。それと同じようなことを都会ですれば良いということなんです。
バーに行けば一発でわかる「良い男」
そして、バーです。難しそうなバーは多くの男性にとってアウエイです。
というわけで、これからバーで良い男かどうか判断する方法をお教えします。
まず、いつもいつも思うのですが自分が壁際(日本では上座と呼びますね)に座る男は絶対にダメです。常識なのですが、タマにいます。女性に壁際に座ってもらうのは世界的なマナーのように思うのですが、欧米人でも壁際に座る男は座ります。普通に考えて、マナーとかそういうの以前に女性が落ち着ける側の席に座らせて、自分は落ち着けない方の席に座ると判断するのが正しい姿勢だと思います。
あと、バー業界では有名なのですが、初めて来たバーでカウンターが全部あいていたとき、いきなりど真ん中に座る人はちょっと変わった人です。初めてだと端か端から2番目あたりに座りたくなるのが普通です。それをど真ん中に座るって、ちょっと他人との距離の取り方が上手じゃない人です。他人との距離、結構大切ですよね。
僕は以前、メニューがないバーで働いていました。怖いですよね。でもそういうお客様に緊張させるバーだったんです。で、初めて来たお客様はほとんどの方が「メニューはないんですか?」と聞いてきます。「すいません、ないんですよ」と答えると、ほとんどの人が表情が止まります。バーに慣れてる方だと、「シングルモルトは何がありますか?」とか色々と聞いてきます。でもほとんどの人が「じゃあジントニック」とか「ハーパーソーダ」とかいう風に無難なものを注文します。こういう瞬間って男力を試されるんですよね。男性のあなたならどうしますか? 隣には「今日はこの女の子をちょっと酔わせて、ムフフ」という可愛い彼女がいます。カッコ悪いところは見せられません。
こういう男性がいました。「あの、僕、メニューがないバーって初めてでして。どうやって注文したら良いのかよくわからないんですけど、たぶん彼女は飲みやすくてそんなに強くないもの、僕はさっぱりしたものが飲みたいんですけど。何か教えていただけますか?」完璧ですよね。こうやって言われれば、もちろんバーテン側も「あなたの味方になります。このデートを成功させるのを手伝わせて下さい」という気持ちになるんです。こういうことを言える男って、これからの人生困ったことが起きても上手く乗り越えられると思うんです。女性に「この人、すごく良い男ですよ。絶対に手放さないように」と心の中で伝えます。
「この男で良いのかなあ」と悩んでいる貴女。まずはメニューのないバーを探して、そしてその彼に何食わぬ顔で「良いバーがあるって教えてもらったんだけど行ってみない?」と伝えてみましょう。彼の「メニューがない」と知ったときの慌てぶりが今から想像つきますね。
こんな感じでバーの人間模様をご紹介します。ではまた次回、こちらのお店でお待ちしております。