第5章/NOと言える大和撫子たれ
満員電車というものをよくご存じない人にとっては、もしかすると驚くべきことかもしれない。中学生のときより、高校生のときより、大人になって制服を脱いだ今現在よりも、「小学生のときが最も頻繁に、毎朝、痴漢に遭っていた」という話は。
東京の都心には幾つかの私立小学校があり、かわいらしい制服を着た年齢一桁の児童たちが、公共交通機関を利用して通学している。私がそのうち一人だった昭和の終わり頃、混雑する朝の地下鉄には、必ずといっていいほど、ロリータ専門の痴漢たちが乗っていた。一人や二人ではない。明らかに目当ての制服を着た生徒の乗降が多い穴場を狙ったプロたちの犯行である。ちなみに校舎脇の通学路の「風景」をはるか遠くから望遠レンズ+三脚で撮影しにくる大きいお友達もおり、体育教師などが警邏巡回して追い払っていた。
ロリコンの痴漢は、子供の目にも、一発でロリコンの痴漢だとわかる。同じ車両に魅力的でグラマラスな大人の女性がたくさん乗り合わせているのに、一心不乱に脇目もふらず、かたまって登下校する我々チビッコのほうへ人波をにじり寄ってくる。Tシャツに手ぶら姿で乗ってくる猛者もいた。嘘でもサラリーマンか学生に擬態して来いよと思うのだが、あまりにもわかりやすすぎるため、あっという間に周囲の善意ある乗客たちに四方を取り囲まれ遠方へ押し流されていった。彼らから学び取れることなど何もないが、強いて述べるなら「目的を達成したければプロセスを丁寧に、行動する前にまず、どんな結果になるか考えて」だろうか。
私もオタクのはしくれとして、もっと崇高な魂を持ったロリコン諸氏がいることも重々承知である(>「オタクだからこそ女の子を守ります宣言」)。が、実在の幼女が身体の自由を奪われている状態を無遠慮に触ってくるような痴漢は、襲う相手が弱ければ弱いほど自分に有利だと考えるだけの、ただのクズ野郎である。この手の痴漢を追い払うには、「貴様らが思っているほど我々は弱い存在ではない」と知らしめればよい。