うつむき加減にそっと咲くオダマキ
どうしても住みたくなった場所
10年前の11月、私たち夫婦はこの土地に家を建てて引っ越してきた。夫の転職が決まると同時に土地探しを始めて、もっと田舎へもっと遠くへ。できるだけ都会の喧騒から離れて、自然に囲まれて暮らしていきたい。たった数年でここまで考え方が変わるなんて思いもよらなかったけれど、家庭菜園をきっかけに緑に触れるばかりでなく、いつ何時も緑に囲まれることを望むようになっていったのだった。
なんどもなんどもドライブをして、どうしても住みたくなった場所があった。それが長野県東御市御牧原。坂を登って山の上にたどり着くと、穏やか地平線が連なっていく。山を登ったにも関わらず、なぜか台地が続いている。とても不思議な地形で最初に来た時にとても驚いた。空気が澄んだ日の遠く西の空には、北アルプスがうっすらとしかし雄大にうつり、東には浅間山がくっきりと浮かぶ。北側には蓼科山まで見渡すことができ、360度パノラマビュー。人家は数えるほどしかなく、田畑ばかりが続いていく。朝に来ても、昼に来ても、夕方に来ても、雨の日も晴れの日も雪の日も、いつ来てもいい。変わったものは何にもない。信号機もない。夜は街灯すらなく真っ暗で何も見えない。この辺りで暮らしてみたい。ここに売地、出ていないかな?
近所の不動産を探してみると、ちょうど3つ4つ近隣で売りに出ている土地があって、早速見せてもらうことにしたのだけれど、1つ目であっさりと恋に落ちた。ここがいい。その後、数件見せてもらった土地には何の興味も湧かなかった。最初に見たあそこにしよう。あそこが絶対いい。
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家の裏からため池を望む