外野は「承認」を与える機関?
【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表。
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務。
同じく1980年生まれの会社員
森田 前回は、「お互いの外野(=当事者以外の第三者)が一堂に会する場」としての結婚式に注目し、そこで発生しがちなモヤモヤについて考えました。そこから「恋愛や結婚では外野からの“承認”が結構ポイントになる」という話につながっていった。
清田 結婚式は、外野からの承認を得るための儀式とも言えるしね。神ではなく出席者に誓いをたてる人前式は、まさにそれを可視化したものだろうし。
森田 恋愛の場合でも、外野からの承認が影響することは意外とよくあるよね。例えば俺の女友達は、好きになった男性とセックスをし、定期的にも会ってるんだけど、告白されてないし確かめてもいないから「どういう関係なのかわからない」とモヤモヤしていた。でもあるとき、ふいに彼の友人を紹介されて、それで初めて「あ、ちゃんと付き合ってるんだな」って安心できたと言っていた。
清田 我々がやっている失恋ホストにも、曖昧な関係にモヤモヤしている女性がよく相談にくる。「私たちってどういう関係?」と言葉で確認するのは勇気が要るし、不安になるのもよくわかる。
森田 話題の漫画『凪のお暇』にも、曖昧な関係の彼に連れられてバーベキューに参加した主人公の凪が、彼の友達に恋人として紹介されなくてモヤモヤする……みたいな場面があったな。
清田 専務の女友達の例では、はっきり言葉にしていないにも関わらず、友達に紹介されたことでステータスが「恋人関係」になり、安心を得られたというのが興味深い。我々の大好きな『セックス・アンド・ザ・シティ』を始め、海外ドラマにもそういう場面がよく出てくる。「承認機関としての外野」ってわりと普遍的なものなのかも。
森田 現実としては、言葉より前に関係性ができてしまうことも多いしね。もっと言うと、「好き」という告白が付き合っていることの確証にならない場合もあるわけで。
不倫関係はなぜ行き詰まるのか
清田 我々は不倫の話を聞くことも多いけど、多くの場合、不倫って外野が不在なんだよね。関係自体を秘密にしてることが多いし、会うのもたいてい部屋とかホテルになって閉塞感が高まっていき、そもそもゴールが見えないことと相まって関係性がドン詰まる という話をよく耳にする。誰にも言えなくて、それで我々のようなしがらみのない相手に遠慮なく話してみたかったという人も多い。
森田 不倫関係って、外に出かけたら出かけたで、気遣うことが多くて大変みたいだよ。かつて既婚男性と付き合っていた女友達に聞いた話なんだけど、二人は映画や舞台が共通の趣味だったから、よく一緒に行ってたんだって。
清田 不倫にしては、わりと大胆な行動だね。
森田 ただ、実際には彼はかなりビビってたみたいで、特に彼の知り合いが来てそうな作品を観に行くときは必ずサングラスとマスクを着用していた。「どこの芸能人ですか?」みたいな変装だよね。ちょっと滑稽だけど、彼女からするとすごく嫌だったし、傷ついたと言っていた。
清田 それはきついなあ。もちろん堂々とされても困るけど、そこまで必死に隠されると「私って一体……」という気持ちも起きそう。それに、好きな人の痛々しい行動ってあまり見たくないものだし、しかもその変装だと逆に悪目立ちもしそうだし(笑)。
森田 だったら無理して一緒に来てくれなくていいよって彼女は思っていたらしいんだけど、彼としては、むしろそういう場に行きたがったみたい。
清田 それっておそらく、「あなたと一緒にいたい」「あなたの存在を隠したい」という相反するメッセージを同時に受け取ることになるから混乱するよね。彼としては「別に隠すような関係じゃないよ」って表明したい気持ちがあったのかもしれないけど。
森田 なんかさ、「(不倫だけど)普通に付き合ってるのと同じだよ」って示したがるのって、大事な問題を棚上げにしてごまかしてるような、ずるい態度だなって感じるんだよねえ。
清田 俺の男友達にずいぶん長いこと不倫してる人がいるんだけど、そいつは不倫相手の女性のことを、サッカーの集まりにしれっと連れてくるのよ。いかにも「普通に彼女ですよ」みたいな感じで。
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