左:原作者の吉田貴司さん。右:監督の山口雅俊さん
やれたかも委員会の主宰者の能島は童貞なのか?
—— 『やれたかも委員会』はウェブサービス・noteに掲載されて話題となり、'16年12月よりcakesでの連載がスタートし、今回地上派でのドラマとして映像化が決定しました。映像化するにあたって、お二人の間では、どのようなお話し合いがされたのでしょうか。
山口雅俊(以下、山口) まずは原作の設定や意図です。たとえば、やれたかも委員会メンバーのセンターに鎮座する能島譲という人物は童貞ですか、とか。主要人物のバックグラウンドについてお伺いしつつ、親睦を深めていった感じです。原作者の意図を知るということは、とても大事なことなんですよ。
吉田貴司(以下、吉田) 出版社が間に入ることが多い中、今回、僕は直接やりとりさせていただきまして。僕にとっては自由度が高くてよかったのですが、監督側からは、やりにくいということはなかったですか? そこ、実はずっと気になっていたんですが。
山口 作る過程で迷ったりしたときに、吉田さんに直接相談できるっていうのは、とてもありがたかった。それこそ、能島が両脇の委員、月綾子とオアシスをなぜ招聘するに至ったのか、といった点まで相談できましたから。
——解釈違いを起こさないためにも、必要なプロセスだということですね。ドラマのキャスティングに関しては、吉田さんはどのように感じましたか?
キャストは白石麻衣(乃木坂46)さん、佐藤二朗さん、山田孝之さん/©2018吉田貴司/ドラマ「やれたかも委員会」製作委員会・MBS
吉田 僕はドラマや映画にそれほど詳しいわけではないのですが、「山田孝之さん!? 知ってる!」となりました(笑)。あとNHKの「時空超越ドキュメンタリードラマ」で、すごくカッコイイ西郷隆盛を佐藤二朗さんが演じておられて、その方が能島をやってくれるんだと思って、うれしくなりましたね。
——吉田さん側から、脚本に対して意見を言ったりといったことは?
吉田 まったくなかったです。台本があがる度に読ませていただいていたんですが、自分のマンガの台詞がそのまま使われているのを見て、ちょっと恥ずかしく感じていたくらいです(笑)。
実写化は挑戦のしがいがあった
——撮影はどういうふうに行われたのでしょうか?
山口 今回は、委員会メンバーと相談者との対面シーンをまず先に撮影しました。佐藤二朗さん、白石麻衣さん、山田孝之さんの3人がそろうシーンを最初に撮り、回想シーンはあとから撮っていったんですね。委員会シーンを撮影している時点で、回想エピソードは台本の情報だけ。どんな画になるのかはわからないまま3人に演じてもらいました。
委員会メンバーと相談者との対面/第1話「宅飲みで2人きりになったあの夜」より
吉田 マンガがそういう構成だから、というのも大きかったのでしょうか。
山口 いや、スケジュールの都合です(笑)
——各回の相談者もですが、回想に登場する女性たちの存在感も、とても重要ですよね。相談者が引きずっている「やれたかも」の想いの強さに深く関わってきますし。
山口 たとえば、「お米編」で言うと、巨大掲示板での交流をキッカケに、川上ヒロミという女の子が「慰めに来てやったぞ〜」と居酒屋にやってくるシーン。原作ファンにとってはとても印象に残っている場面だと思うんですよ。SNSで知り合って、飲み屋に現れた子があんな子だったら……って。男性にとっては、スイートドリームというかスイーテストドリーム(笑)
吉田 確かに(笑)。
山口 (川上ヒロミ役の)武田玲奈さんがハマッたので、男性側の気持ちともども、再現できたと思っています。原作も、最初の「山なみ編」と、後半の「太陽の塔編」だと、書き込みの量が全然違うじゃないですか。「山なみ編」は余白の部分がとても多かった。その分、余白を埋めるという意味での実写化の難しさと挑戦のしがいがありました。
吉田 原作1話目の「山なみ編」は、本当に何もないですからね。女の子の家に行って、干し芋を食べたっていうぐらいで(笑)。でも、Amazonのレビューではその1話がいいって書いてくださる方もいて。マンガ独特の思い切りの良さというか、余白を読者が補完できる。自由度が高いところを評価してくださる人もいましたね。
山口 ドラマの1話目も「山なみ編」です。驚きを与えるというか、観たことのないドラマに仕上がっていると思います。
(後編『「やれたかも委員会」というタイトルで、難色を示されたことも』は5/4更新予定)
構成:根岸聖子