結婚しなくてもいい時代に、結婚する理由は?
—— 現在、日本の生涯未婚率は過去最高の男性23%、女性14%。男性の約4人に1人、女性の約7人に1人が一生結婚しないという時代になりました。おふたりはその背景についてどうお考えですか?
鈴木 『ウートピ』は読者像として“年収450~600万の首都圏で働いている女性”をターゲットにしており、ときどき対象者を20人ほど集めてヒアリング会を開催していたんですね。
集まるのは条件的にメガベンチャーや大手企業に勤める30代の女性たちが多くなるのですが、そのくらいの年代ともなるとみんな忙しいんです。寺田さんがまさにそうだと思いますが、新規事業を立ち上げるとか、扱える裁量が広がると仕事が面白くなってくる。忙しくて恋愛に割く時間がない、という現実はひとつあると思います。
寺田 10年前の20~30代なら結婚がもっとあたりまえでしたが、女性が仕事で活躍し、自立が進んでいることで結婚という「形」に執着しない人は増えている印象があります。
ただ全員が「一生結婚しなくていい」と言い切れるか、と言えばそうでもなく、漠然と「幸せになりたい」とか「一緒にいて居心地がいい人と出会いたい」という思いの延長で、結婚に関心のある女性は多いのではないでしょうか。
鈴木 おっしゃるとおり、価値観が近くて、仕事のこともプライベートのことも何でも話せる相手がほしい、という感覚は肌で感じます。
「結婚がしたい」というよりも、一緒に生きていける「パートナーがほしい」というのが感覚として近いかもしれません。「居心地がいい」という言葉がまさに典型ですが、相手に求めるものが年収などのスペックではなく、フィーリング優先になってきている。
読者を見ていると、仕事を辞めずに一生働く意識でいるし、そのぶん自分のお金は自由になるわけだから相手に対して年収などはそんなに求めていません。「結婚しろ」という親の声や、子どもを産む・産まないにもそこまで縛られていない。「もしフィーリングが合う人がいれば結婚するのもいいかな」くらいに考えているのではないか、と。あまり焦っているようには見えませんね。
寺田 お互い幸せに過ごせる相手がいれば一緒にいるし、それぞれ目指す道が変わったらお互いを思ってポジティブに別れを選択するとか、そういう形にしばられない関係が増えるのかもしれませんね。各々が自分の幸せを一番に考えたうえで、一緒にいるのか、ひとりになるのか選択をしていく時代というか。
30歳を過ぎた頃から、自分のためだけに頑張るのが疲れてくる
—— 逃げ場としての結婚、ではないですが、自立して働くことに疲れて「専業主婦になりたい……」と結婚を目指す女性もいるのでは?
鈴木 現実的な選択肢かどうかは別として、仕事がつらいときに「専業主婦になっちゃう?」みたいなことがちらりと頭をよぎることはあるんじゃないでしょうか。『ウートピ』でも「『仕事がしんどい』だから専業主婦に逃げようとしている貴方へ」という切り口で、専業主婦になった場合の生活シュミレーションを記事にしたことがありましたが、それはものすごく読まれました。
30代ってちょっと疲れてくるタイミングでもあるんですよ。20代までは自分の限界が見えていないので仕事もがむしゃらに頑張れるんですけど、30を過ぎた頃から自分がどうやら天才でもない、ちっぽけな存在であることが分かってくる。
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