妖怪処刑人 小泉ハーン

娘はいつ、どこで死んだ?

一八九九年夏。京都にある下劣な見世物小屋「サウスイースト・ビリーヴ・オア・ノット」。最新のショウは、本物の死体と見紛うばかりのゾンビ少女の見世物。小屋の前を通りかかった旅行服姿の女、文子は、デッドガールの容姿や傷跡が死別した娘に酷似していることに気づく。文子は京都に滞在中の妖怪ハンター、小泉八雲を頼るのだった。
◆伝奇アクションホラー小説『妖怪処刑人 小泉ハーン』より「デッドガール」編第2回!◆

 一八九九年、八月下旬。長崎で路銀を稼いだハーンは、遠野へと向かう旅の途中、京都に滞在していた。彼が贔屓にしている宿はいくつかあるが、どれも大通りからは一本外れた、裏通りの運河沿いにある。

 その一つがこの吉田屋であった。芸者遊びやスキヤキといった華々しさとは無縁だが、旬の料理を提供し、出自にかかわらず全ての客を客として平等に扱う……そのような気概と礼節を併せ持つ、昔気質の宿である。宿の軒先には「幽霊十両」「妖怪五十両」と書かれたハーンの幟が立て掛けられ、妖怪猟兵の滞在を告げていた。

「しかしまあ、幟もえらい減ってしもうたもんや。寂しい寂しい」

 老店主は鰻を焼く七輪を団扇で扇ぎながら、その旗の侘しげに揺らめくのを見て、世の儚さと時代の流れを思った。かつては妖怪猟団の十数本の旗が吉田屋の前に並び、勇壮にはためいたものだが、今ではボロボロに吹き曝されたハーンの幟のみである。

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妖怪処刑人 小泉ハーン (単行本)

本兌 有,杉 ライカ,トレヴォー・S・マイルズ,久 正人
筑摩書房
2018-02-20

この連載について

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妖怪処刑人 小泉ハーン

ダイハードテイルズ

時は19世紀末。葵の御紋は未だ死せず。江戸城には無慈悲なる大老井伊直弼。永世中立交易都市たる京都神戸を境に、西部では薩長同盟が勢力を維持。一方、強化アーク灯の光届かぬ荒野には未だ魑魅魍魎が跋扈し、開拓地の人々を脅かし続ける。かくの如き...もっと読む

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