02 デカルトはときどき「誤る」_2
「意志」という名の「ブレーキ」
判断ミスを回避するには、もちろん判断材料について前もって「十分に」知っておくことがとても重要です。『哲学の原理』の第一部第三三項では次のように述べられています。
「肯定または否定すべきだと明晰かつ判明に覚知されたことだけを肯定または否定するのであれば、誤ることはない」
当たり前と言えば当たり前の話です。しかし、そう簡単に問屋は卸さない。そもそも私たちの知性は全知全能の神と違って有限なので、いつも「明晰かつ判明」な知識が事物について得られるとは限らないからです。
そうなると、言わば苦肉の策というか次善の策に打って出る必要があります。デカルトはそれを「第四省察」のなかで次のように説明しています。
「事物の真理の明らかでない時は、そのつど判断を下すのを差し控えなければならないことを思い起こす―そうすることによってのみ、誤りを差し止めることができる」
つまり、判断しなければならないことについて「明晰かつ判明に」知られていないあいだは判断を下すのをいったん中断せよ、というアドバイスです。
ところで、このアドバイスには少なくとも二つの注意点があるように思われます。
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